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「はっ、そりゃそーだろ?
啖呵切って男に向かってった、貴重な参考人なんだからよ」


喧嘩っ早そうな男の人が、呆れたように私を見てきて。


「参考人って…」


今から夕飯作らないといけないのに…。
じゃないと、私より先に家に帰って来ちゃう。
弱ったなと思ってハギワラくんを見ると、少し困ったように苦笑いした。

…その顔を見て、何故だかドキッとした。
…い、イケメンって罪…。


「と、とにかく…私は急いでるので!
後は有能なみなさんにお任せします!さようなら!」

「て、おい!_____」


みんなの引き止める声を背に、私は急いでコンビニから出た。
…何故か分からないけれど、これ以上ハギワラくんという人のそばにいてはいけないと、本能的にそう思った。

ちょうどパトカーのサイレンの音が辺りに響いてきて。
あの人たちが無事に警察を呼んでくれたのだと胸を撫で下ろしていると、後ろから駆けてくる足音が聞こえてきた。


「_____ねぇ!お姉さんちょっと待って!」

「っ!」


ビクッとして振り返ると、ハギワラくんだった。

息を切らして、私の目の前までやって来た。
私よりもかなり背が高くて、見上げる形になる。


「…これからは、無茶しちゃダメだよ。
君が優しいのはよく分かるんだけどさ」


ぽりぽりと頬を掻き、また困ったように笑って。


「え…と、」

「…手、震えてたからさ」

「……」


…バレてたんだ。

本当は怖くて堪らなかった。
そりゃそうだ、銃を持った大男に向かって行くのなんて。
それでも、子どもが人質に取られているのを、放っておけなくて。


「…はは、よく見てるんですね。
分かりました、もう無茶はしませんから」


洞察力が鋭い彼に何だか全てを見透かされているように感じて、もうこの人と距離を縮めてはいけないと。
"それなら良いんだけどね"と優しく笑った顔を見ても、尚更。


「…あ、あとさ。…もし良かったら、名前、教えてくれない?」

「……」

「…俺は萩原研二、よろしくね」


それなのに、私に手を差し伸ばして来て。


「私は、AA。…よろしく、萩原くん」


その手に自分の手を重ねると、萩原くんは花が咲くように嬉しそうに笑った。


「…ん、Aちゃんね!」


…て、いきなり下の名前で呼んでくるし。

それでも、繋いでいる手を笑顔でぶんぶんと振る萩原くんを見ていると、まあいいかと、ついつい私も笑みが溢れた。

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年10月16日 0時

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