来世もまた恋をしよう。【萩原研二】 (ページ14)

今日:86 hit、昨日:49 hit、合計:15,831 hit

13ページページ14

昔から落ち込んだ時とかに来る場所があるからと、萩原くんは綺麗な海がすぐそばで見渡せる場所に連れて来てくれた。
こんなに間近で広くて綺麗な海を見るのは初めてだったから、私はついつい興奮してしまい。

まるで子どもみたいだと、萩原くんに面白そうに笑われたりもした。

だけど、きっと私を励まそうとしてくれて大切な場所まで連れて来てくれたのだということは、十分伝わってきた。

・

海に来るまでは車も出してくれ、ペーパードライバーの私はただ隣に座っているだけだったけれど、着くまでに本当に色々な話をした。

松田くんとは昔からの親友だということ。
警察学校で知り合った伊達班長達との出来事。
…家族とのこと。

不思議と、二人で横並びになって海を眺めながら、飽きもせずずっと話し続けていた。

「_____じゃあ、運転が得意なのは、お父さんの影響だったんだね」

「そうそう。車の修理工やってたからさ。
まあ、その工場が倒産したことで、絶対に失業しない警察官を目指すことになったんだけどね」

「…そうだったんだ」

前を向きまた海を眺め、なんてことないように笑って見せたけど、何だか少し寂しそうな表情(かお)にも見えて。
…その顔を見ると、自分でもよく分からないまま、自然と萩原くんの頭に手が伸びていた。

体を揺らし、目を丸くし私を見た。

「辛かったんだね」

「……」

「萩原くんは、よく頑張ってるって…私はそう思うよ」

いつも笑っているけれど、その奥にはきっと色々な思いもあるはずだと、そんなことを思った。

そっと頭を撫でていると、不意にその手を取られた。

そこで初めて、自分はなんて馴れ馴れしいことを言い、馴れ馴れしいことをしてしまったのだと自覚した。

「…俺が励ましたかったんだけどな。…ずりぃな、Aちゃんは」

それだけ呟くと、指を絡められ、少し照れを含んだような顔が私を捉えた。

まるで手を繋いでいるような形になり、ドクドクと穏やかな時間には相応しくないくらい鼓動が速く脈打つ。
声を出したいのに、上手く言葉が出てこなくて。
ただ、緊張からそのまま目を合わせていられなくて下を向いた瞬間、繋いでいた手を引かれた。

「抱えてるモノ全部、俺にぶつけてよ」

繋いでいない方の手が、優しく背中に回った。

「……全部、絶対に受け止めて見せるからさ」

何故か…気づけば涙が頬を伝っていた。

14ページ→←12ページ