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お兄ちゃんと鉢合わせない時間を見計らい、お風呂に入った。

一番言ってはいけない酷いことを言ってしまったこと、萩原くんとの友達という関係を否定されたこと…そのことが辛くて仕方がなくて、せっかく顔を洗ったのにまた涙が溢れて止まらない。

涙を拭っていると、突然着信音が鳴った。


「(萩原くんだ…)」


ベッドに置いてあるスマホには、萩原くんの名前が表示されていて。
鋭い人だから、泣いているのがバレてはいけないと思い、深呼吸して心を落ち着かせる。


「___あ、もしもし?Aちゃん?」


…何故か、その声を聞くとまた涙を堪えきれなかった。














「___今大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」


聞こえてきた声はいつも通りで、とても落ち着く。


「___…Aちゃん、泣いてたでしょ」

「ッ…」


声は震えてなかったはず、それに、本当に普通通りに答えたのに。…どうして分かったの?


「泣いてなんか…。……何でそう思うの?」

「___声聞いたらすぐ分かるよ。…声が、すごい悲しそうだからさ」

「……」


…本当に、鋭い人。
人をよく見ていて、察知能力が高くて。


「___よし、どっか楽しい所にでも出かけようか」


萩原くんはどうして泣いていたのかとか何一つ聞かず、私を元気づけるようにそう言った。













萩原くんは、今週末は休みがあるからと、少し遠くまで出かけようと提案してくれた。

何故だか私も、萩原くんに会いたいと思って。
自分でもほとんど無意識に、"私も会いたい"と答えていた。


「萩原くん…!」


待ち合わせ時間までまだ20分もあるのに、落ち合う場所の噴水の所で萩原くんは座って待っていて。
私の声を聞くと、立ち上がって嬉しそうに手を振ってきた。

私も咄嗟に手を振り、待ち合わせ場所まで小走りで向かう。


「(…ほんと…どんな時でも、笑ってるよね)」


いつも笑顔で、楽しそうで…つられてこっちも笑顔になるほど。


「そんなに急いだら危ないよ、Aちゃん」


私よりも先にそばまで駆けて来てくれ、息を切らす私を心配そうに覗き込んできて。

心配するポイントが面白いなと思いながら、平気だと笑って見せる。


「それより萩原くん、随分早くから待ち合わせ場所まで来てたんでしょ…?」

「んー、Aちゃんのこと待たせたくなかったし。
それに、早くから来たのはAちゃんも同じでしょ?」


またニコッと笑った彼を見て、胸がじわっと温かくなった。

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年10月16日 0時

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