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「冗談やめてよ。私だっていつまでもお兄ちゃんっ子なんかじゃないから」

「そんなこと言って…Aを一番分かっているのは、これからもずっと俺だろう?」

「…ははっ、何それ」


こんなに無理して笑っているのが、一番近くにいるくせにこの男には分からないのか。…これじゃあまるで、Aちゃんを捕らえて離さないのと同じこと。

普段ほとんど、と言うより、滅多に怒ることのない自分がイライラしていることに、自分で驚く。


「あ、ごめんね、萩原くん…忙しいのに長い間引き止めちゃって」


申し訳なさそうに笑ったAちゃんに手が伸びそうになり、何とかギリギリのところで抑えることができた。











「全然。俺はAちゃんと話すの楽しいからさ」


またそんなことを平気な顔して言うんだから。
ウィンクするその顔を見て、さっきまでの悲しかったり憂鬱な気分が何故か少し晴れて。


「ふ…ありがとう。じゃあまたね。訓練、頑張ってね」


だけどこれ以上萩原くんといると、私の弱い部分を見せてしまう気がしたから、精一杯の笑顔でそう伝えた。
無理しているのが萩原くんに伝わったのか、"ありがとう"と言いながらぽんっと頭に手が乗ってよしよしと撫でられた。


「Aちゃん、また連絡してもいい?」


私を犬か何かと勘違いしてるんじゃないかと思ったけど、ふわっと笑ってあまりにも優しい顔をしているから。


「…うん、勿論だよ」


そう答える他はなかった。
























「なんかあの男、すごいチャラそうだったな。
Aには似合わないよ」


玄関の扉を開け家に入った途端、兄はそう言った。


「意味分からない、何でそんな酷いこと言うの?
萩原くんはそんな人じゃないよ…!」


自分でも不思議なくらい、その言葉に腹が立って仕方がなかった。
この場にいたくなくて、ヒールを脱いで2階にある部屋まで向かおうとした。


「っ、なに、」


だけど、腕を引かれて。


「お前はまだあの萩原って男と出会って日も浅いだろ?
…とにかく、あんな軽そうな男とつるむな、たとえ友達だとしても。俺は許さないからな」


萩原くんは私を助けてくれた、それに…不思議なところはあるけれど、いつも明るくて優しくて。


「っ…血も繋がってないくせに、!偉そうなこと言わないで!」

「おいっ、A!」


お兄ちゃんの手を振り解き部屋まで駆け込んだ。
部屋に戻ってからは、涙が止まらなかった。

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年10月16日 0時

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