来世もまた恋をしよう。【萩原研二】 (ページ2)

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人質なのに、犯人に啖呵を切る人間…それも、自分より遥かにか弱い女の子がそんなことをしているのを、目にしたことがある人間はいるだろうか。

「_____良いから、早くその男の子を解放して」

たった今、その現場を目にしている。

いつものように、陣平ちゃん、降谷ちゃん、諸伏ちゃん、班長の4人とコンビニに来ていた。
あーでもないこーでもないと、男5人でくだらない話をしていると、突然男が銃を発砲して近くにいた男の子を人質に取った。

大人しくしてろと店内にいる客に叫ぶ男に、たった1人迷いなく近づいていった女がいた。

「_____自分に逆らえない子どもを人質に取る時点で、やってることがとんでもなくダサいのよ、あなた」

長い髪を一本に結って、怯むことなく男の目の前で強い口調で話す。

その言葉で男の対象は男の子ではなく、その女に移った。
男の子は解放され母親の元へ走っていき、代わりに女が捕まえられた。

「まずはあの女性を助け出さないと、大変なことになるんじゃないか？」

「にしても気が強(つ)ぇ女だな」

「うん、ちょっと松田みたいだよな」

「諸伏！誰が俺みたいだよ！」

「おめーら！今はそんなこと言ってる場合じゃないから！」

あれやこれやとまた話し出した4人よりも何よりも、少し離れた所で男に羽交い締めにされながらも、睨んでいる女の子の方が気になって仕方がない。

「あなた、人に向かって銃を撃ったことないでしょ？」

「何だとてめぇ…？！？！」

「だって、拳銃を持つ手が震えてるもの」

…っ何たって凶器を持った大男にあんなこと言えるんだ。
……それに、自分だって握っている拳が震えて…。

「(っバカ野郎…！)」

気づけば、体が勝手に動いていた。

・

人生で人質になった人は果たして何人いるのだろう。
テレビの中でしか見ないと思っていた光景が、今目の前に広がっている…というより、自分が人質になってしまっている。

「おいっ…！この女を撃ち殺されたくなかったら、さっさと逃走車と食料を持ってこい…！」

ことの発端は、私が人質になっている男の子をかばい？この男を刺激？してしまったことで。
額に拳銃を当てられ、いよいよ万事休すか…と思って顔を上げると、長身の人が私に向かって一直線に走って向かって来た。

…焦ったようなその顔が、やけに脳裏にこびりついて。

「っ、噛め…！！」

その言葉でハッとし、私は犯人の手に噛みついた。

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