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元太くんを守ることを最優先し、人混みをかき分け目視で覚えていた地図を思い出しながら、なんとか垂直式救助袋のところまでやってきた。

私は一度目で見たものは基本的に正確に記憶に残る。…昔はただそれを利用されて暮らしていたけれど、今は役に立つから良かったと心底思った。


「ほんとに俺だけで行くのかよ…?」

「うん、2人ではいけないから。
大丈夫、出口には人もいる…っ時間ないから押すよ!」


もう一度爆発するとしたら、体感ではあと数分だ。


「ぅ、A姉ちゃん、」


元太くんはまだ話したそうだったけど、時間もなかったため、ゆっくりと背中を押した。







近くの階段のところまで、なるべく急いで向かった。
運動神経は良くないけど、走って走って走った。
…あと少しというところで微かな音が聞こえ、直後に地面が揺れた。


「っわ…!」
 

揺れと共にバランスを崩し、壁にぶつかると思って目を瞑ったけど、自分の体が壁をすり抜けた気がした。


「(嘘でしょ…っ)」


偶然扉が開いていたエレベーターの中に、ギャグみたく体を投げ飛ばされた。









「いたっ…」


エレベーターの壁で体を強く打ち、衝撃の強さからすぐに立ち上がることができない。
扉が開いているうちに出なきゃと腕を伸ばすけど、視界が歪む。


「ッ…」


何もできずにいると、すぐに扉が勢いよくバタンと閉まり、エレベーターが箱ごと幾らか下に落ちた。
今度は地面が斜めになり、また壁に体を打ち付けられた。


「(私、死ぬのかな…)」


あんなに死ぬことを何とも思っていなかったのに、死にたくないなんて、らしくないことを思って視界が暗くなった。









"_____A、お前も銃の扱い方くらい覚えろよ。
そんなんじゃ呆気なく死んじまうぞ"



懐かしい声がした。



"俺は今からスパイとして潜入する。
ま、少なくとも5年は潜入するだろうな。
それで俺は誰よりものし上がる、勿論、ジンよりもな_____"



何であの人の声が聞こえるのだろう。
…ねえ、私を置いていかないで。


"___Aさん…!!!!"


聞き覚えのある声、焦ったような声色。


「___聞こえますか?!Aさん…!」

「っは…」


うなされていた長い夢から覚めた。

真っ先に目に飛び込んできたのは、大粒の汗をかいて焦った顔をしている安室さんだった。


「(…そんな顔も、するんだ…)」


少し笑って見せると、安心したように笑い返してくれた。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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