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47. ページ48




「余程気を張ってたんですね」

「そうだね…この二日間、僕が無理難題を言いすぎたからかな」


そう言って笑う安室さんを見て、初めて会った時に風見さんが言っていたことを不意に思い出した。仕事で無理難題を言われているとか何とか…。
でも、仕事もできるしフィジカルも強いし頭がキレるし料理もできるし何でもできるし…と尊敬してもいた。

だからこそ…。


「安室さんのことになると、きっと一生懸命なんですね」


肌寒い季節でブランケットは多めに持ってきたため、一枚を横になっている風見さんにかけ、一枚は折りたたんで枕のようにした。


「…風見さん…ちょっと失礼します…」


頭を持ち上げてその下にブランケットを置こうと考え、風見さんの首下に手を添えようとした。


「…僕がやるよ」


触れようとした直前にその手を取られ、代わりに安室さんが風見さんの頭の下にブランケットを置いてくれた。

そのまま立ち上がるから、何となくまた行ってしまうんじゃないかと不安が襲ってきた。


「安室さん、早く病院に行きましょう…?
念のために色々検査してもらって…私も一緒に行くから、もっと頼ってください、」


同じように立ち上がって言うと、首を横に振った。


「僕にはまだやらないといけないことがあるから」


…分かっていた。分かっていたけど、またそうやって行ってしまうんだ。今度こそ本当に大怪我をしたら、危なかったら…

…怖くなって、咄嗟にスーツの裾を掴む。


「……お願い、行かないで…。

私を、置いていかないで…ひとりにしないで…」


家族にも置いていかれた。


"…じゃあな、A"


…組織にいる時は、唯一いつも一緒にいたあの人に置いていかれた。

安室さんにもしも何かあったら、今度はまた、私は一人に…


「置いていかないよ。一人にもしない。

…約束する」


まるで子どもに言い聞かせるみたいに、目線を合わせ頭を優しく撫でられる。


「…でも今は、君を連れていけない。
すぐに応援が来るから、先にここを出るんだ。

後で迎えに行く…だから、待っててくれないか」


…そのまま、そっと優しく抱きしめられた。
温かくて、自然と涙が頬を伝った。


「…うん…っ、わかった…」


私も精一杯背中に手を回し、抱きしめ返した。

…いつ伝えられるのか、きちんと伝えられる日が来るのか分からない想いを、胸に秘めた。


to be continued...

探偵から見たその女*→←46.



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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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