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42. ページ43




その言葉でまた涙が出てきて、止まらなくなる。
喋ろうとしても、うまく言葉が出てこない。


「___頼むから泣かないでくれ。
…君が泣いていると、どうして良いか分からなくなる」


涙も出るに決まってる。そんなの、誰よりも…。


「心配、だから…大切に…っおもってるから…。
だから、涙もでる…っ、あたりまえだよ…」

「……」


こんな電話でじゃなくて、ちゃんと面と向かって声を聞きたいのに。…それが叶わないのがもどかしくて堪らない。


「…わたしもそっちにいきたい、いかせてっ…」

「___それはできない」


鋭い声で遮られた。


「どうして…?私の、せいだから…?

…やっぱり、組織が…っ、」


そこまで言って、久しぶりにこの単語を口にしたと自覚した。
安室さんの顔を見ても、組織のことは当然知っているんだなと嫌でも分かった。

私が元いた場所、いや、家族が亡くなってから必然と囚われていた場所。同時に、私たちを引き合わせたであろう存在。


「___今回のことは、組織は関係ない。
これは、過去の僕に個人的に恨みを持った人物によるものだから。

間違っても君のせいじゃない。だから、君を巻き込めないし、巻き込むつもりもない」


ハッキリと言い切られ、また悲しくなる。
私は少しも力になれないのか、組織のことじゃないとしても、何か役に立てることはないの?


「やだよ…っ…他の人なんて、助けなくて良いじゃない。
警察だからとか、どうだっていいっ…

私は、安室さんにも勿論飛田さんにも…ただ生きていてほしいっ…」


私の言葉に、"その言葉だけで充分だよ"と、久しぶりに笑ってくれた。久しぶりに、優しく笑った顔を見た。


同時に、飛田さんと2人の男の人が私のそばに来た。
「もう時間です」と、非情にもその言葉でこれは現実なんだと、また愕然とする。
嫌だと抵抗するけど、「お願いだから言うことを聞いてください」と飛田さんも悲しそうな顔をした。…それでも、ここから離れたくなかった。


「___A」


…そんな風に優しく呼ばれたら、動きを止めるしかなかった。


「___大丈夫、僕は必ず戻るから」


"戻ったら今までのことも全部話すよ"と、そう言って受話器を置こうとした。


「…まって、…っ降谷さん…!」


また布を目元に当てられる前に、咄嗟にそう呼んでしまった。

いつの日かのように、少し困ったように…でも嬉しそうに笑った。

その顔を最後に、また視界が真っ暗になった。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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