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私が数日前、食べることと、たまに飲むお酒が好きだと言ったので、今日は夕方まで食べ歩きをし、それから都内の有名なビール祭りに一緒に行くことになった。

今は夜に向けて、公園の芝生で横並びになって座り、飲み物を飲みながらゆっくりしている。

佐藤くんは、予め映えスポットや美味しいものをたくさん調べていてくれて、今日は本当に、心の底から楽しむことができた。


「…Aさん、最近何かありましたか…?
僕じゃ、頼りにならないですか…?」


だからこそ、良い子だからこそ、思わせぶりな態度や適当な態度を取れないと思った。


「…僕を利用してください」

「それはできない」


そう言うと、絵に描いたようにしゅんとした。


「佐藤くん。いつもはぐらかすから、今日はちゃんと聞いてほしい」


目を見て伝えると分かってくれたようで、手にしたフルーツジュースをぐびっと飲んで息を整えた。
まるで自分が話し始めるかのような仕草に少し笑いそうになりながら、私も気持ちを伝えるために心を落ち着けた。


「…私、好きな人がいる。
て言っても、もう失恋しちゃってるんだけど…でもだからと言って、自分に想いを寄せてくれている人を都合よく頼ることはできない」

「…僕がそれで良いと言っても、ですか…?」

「…うん。だって…」


…だって、気持ちが通じ合っていないのに一緒にいても、相手に触れても、触れられても…苦しいだけだって、誰よりも分かるから。


「…それはお互いのためにならないから。
今日夜まで一緒に楽しんだら、もう会うのはやめよう」


ダラダラと伝えず、ハッキリと伝えた。

軽くため息をついた佐藤くんは、精一杯の笑顔で「分かりました」と言ってくれた。
 

「じゃあ最後に…」

「ん…?」


手招きされたので、何か言いたいことがあるのだと思い、なんの疑いもなく距離を縮めた。
頭の後ろに優しく手を添えられ、左頬にちゅっとリップ音がした。

びっくりしてすぐ佐藤くんを見ると、当の本人は顔を真っ赤にしていた。


「…むかし…弟もよくそうしてきた…」

「……」


目を丸くした佐藤くんに、しまったと思った。


「ご、ごめん…不意に昔のこと思い出しちゃって。
そろそろ行こっか」


立ち上がると、"Aさん"と呼ばれた。
いつもと違う声色に、ビクッとした。


「…いえ、やっぱり大丈夫です。

…早く行きましょう!」


そして、またいつもの笑顔になった。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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