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「わ、できましたAさん!」


まるで花が咲きそうなほど満面の笑みを浮かべるのは、2週間前に知り合った大学の…後輩、とでも言おうか。


「はいはい、良くできました。
じゃあ残りの実験結果も、レジュメにまとめちゃおうか」

「はい!分かりました!」

「……」


私が適当にあしらっても、嬉しそうにニコニコと見つめてくる。

…慣れない、慣れないよこの感じ…!!!
いくら毎日忠犬の如く私の元へ来るからと言えど。

2週間前、突然公開告白をしてきた、佐藤くん。2年前の大学受験の日、入試の手伝いをしていた私に、持ってくるのを忘れた筆記用具を借りた…正確には貰ったらしく。

以来、私にずっと思いを寄せてくれてたと。
そして、意を決して告白をしてきたのが、偶然、ポアロで、しかも安室さんもいた日だった…というわけだ。

あの日は気まずくて、私はすぐに帰った。
けれど、次の日から大学で事あるごとに話しかけてくるようになった。

…一つ不思議なのは、記憶力の良い私が、彼のことを全く覚えていないこと。確かに2年前、入試の手伝いはしてたけど…誰かに何かを貸した覚えが無いのだ。

カタカタとキーボードを打つ後輩を見て、この先どうしようかと、ため息が出た。











「「Aさん!」」

「あれ、園子ちゃん蘭ちゃん!久しぶりだね」


"お久しぶりです!"と、元気よく挨拶してくれた2人は、隣のテーブルについた。
園子ちゃんはすぐに、私の耳元に顔を寄せる。


「あれからずっと、この男、来てる感じとか…?」

「…まあ、うん…」


"信じらんない!"と園子ちゃんはぷりぷりしている。


「Aさん、あれからポアロに全然来てなかったですけど…
安室さんも最近ずっと休んでるみたいなんです」

「そう、なんだ…」


蘭ちゃんの言葉で、もう2週間も顔を合わせていない安室さんに思いを馳せる。
あの日以来、2人でいるところを安室さんにはなんとなく見られたくなくて、ポアロを避けていた。

今日はたまたまいないみたいだったから来たけれど…何かあった、とか…?やっぱり、警察…なのかな。

怪我はしていないかな、事件に巻き込まれていないかな…毎日毎日、安室さんのことばかり考えている。


「Aさん、最近、大丈夫ですか…?」

「…え、あ、大丈夫だよ!ありがとうね」


蘭ちゃんの言葉に、精一杯笑って見せた。

早く、忘れなきゃ……安室さんのことを。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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