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夢の中で、こそこそと誰かが話しているような気がした。
そして、匂いで病院にいると分かる。


「_____気分はどうですか?」


電気の明かりが眩しくて、覗き込んでくる影をハッキリと見ることができない。
だけど、聞き覚えのある声に、レストランで出会ったあの優しいお兄さんだとすぐに分かった。


「…だいぶ、良くなりました」


明るさに目が慣れてきてゆっくりと起き上がると、今度は確かにその整った顔を認識できた。


"それなら良かった"と、ホッと胸を撫で下ろしたのを見て、きっと悪い人ではないと思った。
レストランでは私服を着ていたけど、今はスーツを着ていて。


「誰かと、話してましたよね…?電話とか、大丈夫ですか?」


何気なく思っていたことを言うと、そんなことを言われると思っていなかったのか、目を丸くした。


「本当に耳が良いんですね」

「え、あ、まあ…少し聞こえてきただけです。
"後始末は頼んだぞ"…て…。だから、部下…?の方と話してたのかなって…」

「…なるほど」


スーツを着ている姿を見ていると、なんとなく警察官の類なのではないかと思ったけれど、それは言わない方が良いと直感し、それ以上はやめた。









それからお兄さんは、安室透だと名乗り、年齢も教えてくれた。

もう昨日の出来事になってしまったけど、用がありあの小学生達をレストランに連れて行ったところで、事件に巻き込まれてしまったらしい。
そして、体調が悪いのに無理に証言させてしまって申し訳なかったと、謝ってくれた。


「貴方の証言のおかげで、無事にあの男は逮捕できました」

「……それなら良かったです」


最後に目にしたのが、今にも殺しにかかってきそうな顔をして走ってくる犯人だったから、無事に捕まったと聞いて正直すごく安心した。
安室さんという人は何も言わないけれど、きっと助けてくれたに違いない。


「Aさんは…」

「っ、は、はい…!」


大学でもあまり名前を呼ばれる機会がないから、不意に名前を呼ばれて飛び上がるほどびっくりした。
 
そんな私を見て安室さんはくすくすと笑った。


「サンドイッチはお好きですか?」

「はい…?」


急に何を言い出すのか、この人は天然なのかと怪しんでいると、ニコッと笑った。


「良かったら、お詫びにご馳走させてください」


笑っている顔からは、この前の憂いを含んだような表情は少しも感じられなかった。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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