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「えっと…今はお客様も少ないので、他の席も空いてますが…」


梓さんが戸惑いながら男性に声をかけるけど、当の男性は真っ直ぐに私を見てくる。


「いえ、ぼ、僕は…!Aさんに、会いに来たので…」

「あの…すみません、他のお席に…」

「梓さん、私は大丈夫です」

「え、ほ、ほんとに…?」


どこかで見たことのあるような、ないような…そんな気がしたから、思い出すためにもそれも制止した。

「ちょっと何なんですかアンタ?」と園子ちゃんが隣からガンを飛ばし、男の人があわあわし、「園子やめなよ!」と蘭ちゃんが止める。…そんな3人の姿を見ながら、必死に昔の記憶を探る。

…誰だろう、きっとどこかで会ったことがある。


「_____ご注文はいかがなさいますか?」











その声で、さっきまでの思考も一瞬で止まった。
もう忘れるなんて言っておきながら、真っ先に目で追ってしまう。

注文を取りにそばに来た安室さんも、怪しげな男性ではなく、私を見てきて。
心配そうな顔をしていて、僅かに()が揺れたのが分かった。

…安室さん…いつものように呼びかけそうになった。


「AAさんっ…」


だけどそれも、凛とした声に遮られた。
ガタガタっと音を鳴らしながら、目の前の人は勢い良く立ち上がる。


「ちょっとアンタ!私の話聞いて…」

「……僕と、結婚を前提に付き合ってください」


園子ちゃんの言葉を遮って伝えられたその言葉に、一瞬頭の中が???になった。


「ああ、結婚ね結婚……ん…?けっこん?!?!」













「_____蘭見てよ。まーた来てんね」


園子はそう言うと、2週間前にAさんに公開告白した佐藤という人にべーっと舌を出した。そしてそれを宥めるまでが、一連の流れ。

あの日以来、Aさんはあまりポアロに来なくなったけれど、今日はたまたま来ているみたいで。…多分、安室さんに2人でいるところを見られたくないんじゃないかと思う。Aさんと安室さんの、2人の空気感からして、何となく。

最近Aさんに聞いた話では、同じ大学の人だから、お昼は食堂、夕方は研究室や図書館にまで、足を運んで来るらしい。


「(でもAさん、意外とリラックスして後輩の人と話しているような…)」


素直で真っ直ぐな人だということは分かるから、気が合うところもあるのかもしれない。
…だけど、Aさんが想っているのは…多分、安室さん…だよね。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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