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アラームの音が部屋に鳴り響く。
目を瞑ったまま、スマホの画面を何度かタップする。
今日は休日のため、そして明け方に布団に入ったため、遅めの11時にかけた。

音が止んで、ようやくカーテンから差し込む光に気づく。
それほどまでに、今の私はぼーっとしている。
…夢でも、昨日の安室さんとのやり取りが出てきた。


「……(泣いたんだ…)」


頬を触ると涙が枯れた跡があった。
自覚すると、誰もいない部屋で、また涙がどんどん溢れる。
誰に見られているわけでもないから、そのまま重い体を起こし、洗面所へ向かう。


「…酷い顔…」


腫れた目をした自分が鏡に写り、ため息が漏れた。
…いつの間に、本当の名前も知らない彼のことを好きになってしまっていた。

流れる水が、まるで自分の涙かのように勢い良く流れていく。

どの道、もうこれ以上仲良くなることも、深い関係になることもないのだから。この先辛い思いをすることは、ないんだ。
今日この瞬間、ちゃんと安室さんへの想いは捨て去ろう。

…きっと、私の過去を知っていて近づいたのだろう。

…いいんだ、それでも。

一緒に過ごした安室さんは、素であった瞬間(とき)もあるかもしれない。だから…それで、いいんだ。















「あ、また寝不足ですか安室さん〜」


朝から欠伸が止まらず、いよいよ梓さんに指摘されるほどで。


「はは、すみません…」

「どうせ、昨日夜遅くにお布団に入ったんでしょ〜?」

「いえ、まあ……そんなところです」

「ほら、やっぱり〜!」


笑いながらキッチンに戻る梓さんを見ながら、また昨日の出来事を思い出す。


"だったら私のことも、安室さんには関係ない"


今にも泣いてしまいそうなあの顔が、頭から離れない。


"…風見。お前は公安だろう。見ず知らずの女性に接触して意味もなく仲を深めるのは、僕たちにとって…"

"……お言葉ですが、それは降谷さんも一緒じゃありませんか"


風見()にあんなことを言っておいて、自分は…。


「あれ?!今Aちゃんが通った!」

「…っ…」


その名前に、弾かれたように顔を上げる。


「今日は休日だけど、大学に用事ですかね?」

「…店の前を通ったんですか?」

「ううん、通ったのは反対側の歩道でした。
なんか、急いで走って行ってましたけど…」

「……」


…避けられている、か…。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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