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26. ページ27




「……はは。…君らしいね」


彼の欲しかった答えじゃなかったことは、すぐに分かった。
そのまま前を向き深く座り直し、背もたれに体を預ける。


「…本当の姿は、探偵でもないし、ポアロの店員でもない…
…そうですよね…?」


前を向いたままの安室さんに問いかけると、ゆっくりと私を見た。


「……君には関係ないよ」


今までで一番、冷たい表情(かお)だった。
心を閉ざしているのが、私と距離を取っているのが分かる。
…いつもそうだ。


「だったらどうして、いつも私が気づくような仕草や姿を不意に見せるの?」

「……」

「…あなたは、人と距離を近づけることを怖がってる」

「…っ別に怖がって…」

「怖がってるよ」


気まずそうな顔をする安室さんの目を、まっすぐ見据える。
きっと、本音で話ができるのは、今日で最後だと直感したから。


「確かに、人に言えないこともある…。私にもあります、仲の良い友達には言えないような、過去。…きっとあなたが知ってる、私の過去」

「……」

「…だから、全部を言ってほしいなんて、そんなことは思いません。でも…関係ないって、そんなの…」


"酷いよ"。…その言葉は辛うじて飲み込んだ。


「だったら私のことも、安室さんには関係ない」


はじめから、意図があって私に近づいたのなら、その目的のためだけに動いて欲しかった。…仲良くなんか、なりたくなかった。
安室さんにとってはなんてことないことでも、どうでもいいことも…私にとっては、いつの間にかそうじゃなくなってた。


「中途半端に優しさなんて、見せなくて良いですから。

…これからは、自分の目的のためだけに、私に接してください。連れ戻したければ好きにすればいい。…それで構わないから」


安室さんが何かを言いかけたのが分かったけど、聞くのが怖くて、"送ってくれてありがとうございました"と遮った。
そしてすぐに車のドアを開ける。


「……さようなら」


きっとこの先も、何度も顔を合わせる。

だけどこれは、本音で話すのは最後、今後仲良くなることはない…その意思表示のための、私なりの挨拶だった。









家の扉を閉めると、体の力が一気に抜け、玄関でしゃがみ込む。

居酒屋での飛田さん…いや、飛田と名乗る男性の言葉が蘇る。


"自分はもちろん、降谷さんの本名も素性も何一つ言ってませんので、大丈夫、かと…"


「……耳なんか、っ、良くなければ良かった」



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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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