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「えっ、と…何で、わたし…」


確か安室さんに車で送ってもらってて…


「Aさん、疲れてたみたいでしばらく眠りこけてたんですよ」


安室さんが何かを思い出したかのように急にくすくすと笑い出すから、恥ずかしすぎて顔を覆うことしかできない。


「あんまり気持ち良さそうに眠っていたので、起こすに起こせなくて」

「…え、今何時……うぇ?!3時過ぎ?!」


急いでバッグから取り出したスマホには、"3:20"と表示されており、それだけで自分が盛大にやらかしてしまったことが伺えた。ぶわっと冷や汗も出てくる。


「ご、ごごごめんなさい安室さん!!!!」

「ふ…構いませんよ、全然。車って急に眠くなりますもんね」

「いえ、あの…はい……」


恥ずかしさと情けなさと申し訳なさから、ハンドルに肘をつきこちらを見てくる安室さんのことを、まともに直視できない。


「安室さんの車、乗り心地が良くて…
それになんかすごい安心しちゃって…」

「……」


"えへへ"と笑って下を向いて誤魔化したけれど、さっきの様に笑ってはくれなくて。

顔を上げると、不意に左手が近づいてきて、右頬に触れた。

あまりにも突然の出来事で、無意識に体がビクッと反応した。


「無防備だな、ほんとに」


初めてレストランで見た時のような、憂いを含んだ様な()
私の目を見てるはずなのに、どこを見ているのかまるで分からないように、底がない。


「………目の前の男は本当は悪い奴で…何か別の目的があって動いている。そんなことを考えたことはありますか」

「……」


薄々分かっていた。

気づきたくなくて、気づいていないふりをしていた。

初めて出会った時も、あのレストランで偶然…なんてことは、なかなかあることではない。少年探偵団のみんなをお出かけに連れて行く約束をしていたから、たまたまあのレストランに…と聞いた時も、違和感があった。

私を病院に連れて行った手際の良さも、その病院が警察病院だったことも、私が目が覚めた時にスーツを着ていたことも。

性格的に、ボロを出す人ではないのが分かるから、時折私に見せる顔が、仕草が…まるで"真実"に気づいてほしそうだったことも、何となく、察してはいた。


「…安室さんは、安室さんです」

「……」

「たとえ目的があるのだとしても…今その人が、目の前で話していることや話している姿は、嘘じゃないって…私はそう信じたいです」



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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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