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「困ったときは、いつでも連絡してください」


家の前まで送ってくれた後の、安室さんの帰り際の不意打ちの言葉に、ドキッとした。


「…いつでもって…また爆発した時、とか…?」


少し意地悪を言ったつもりだったのに、安室さんは今までで一番"ははっ"と大きく笑った。


「できれば、爆発する前に呼んでください」


少年のように笑ったその顔に、胸が音を鳴らした気がした。

















「(いつでもって言っても…)」


帰った後すぐに連絡するのは迷惑なのかな。
…いやでも、送ってもらったお礼を言うべきだよね…
こんなシチュエーションに慣れて無さすぎて、どうするべきなのか永遠にベッドの中で悩んでいて。

悩んだ挙句、メッセージを送ることにして、思い切って送信ボタンをタップした。返信が来るのかどうかドギマギするのは体に悪いので、そのまま布団を被って目を閉じた。



















シャワーを浴び浴室から出てリビングに戻ると、スマホにメッセージの通知が来ていた。

心当たりがあり、いつもより少しはやる気持ちでスライドしてメッセージを開いた。


「(……本当に、純粋な人間なんだな)」


…人を疑うことすらせず。

本当は連絡先も、もう少し強引に交換することや、いつもみたく隙を見て携帯を盗むこともできた。
…ただそうすることに、なぜか気が引けた。


"バーボン、次の任務よ"

"任務、ですか?一体どんな?"


…そうだ。これまでと変わらず、組織に潜入している身としてまた淡々と任務をこなすだけだ。
…潜入先の人間に、気を遣う必要など何一つない。

言わば自分はスパイで、彼女は潜入先の重要人物と言うだけ…ただの対象(ターゲット)


これまで通り、国を守るために、自分の目的のために…


「(……僕は誰よりも、冷酷でいなければならない)」















いつの間にか眠りについていて、朝になっていた。
ハッとして握りしめていたスマホを開くと、もう何時間も前に返信が来ていた。


"Aさん、困ったことがあれば遠慮なく言ってくださいね。
またお店で待ってます。

おやすみなさい。"


…そうだよ、これくらいのこと…きっと安室さんにとっては普通のことで。
優しくされているわけじゃないし、これ以上踏み込んでもいけない。

充分肝に銘じていたはずなのに、最近はふと自分の境遇を忘れてしまいそうになる。


「(…私は、普通に幸せになんてなってはいけないのだから)」

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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