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「モテモテですね」


洗い終わったコーヒーカップを拭いていると、隣で同じ作業をする梓さんが一言それだけ呟いた。
視線の先を辿れば、否、今店にいるのはあの子達と彼女だけで、尚更誰のことを言っているのかは容易に分かる。


「はは、みたいですね」


楽しそうに馴染んでいる彼女を見て、当たり障りなく返す。


"こんなに国を想って動いてくれる人を、死なせるわけにはいかないから"


腕を怪我した僕を見て泣く彼女は、そう言った。

そのまま履いていたロングスカートを裂き、彼女は僕の腕に巻いてきた。ただ助けたい一心、そう言うかのように。
…思えば、自分のために涙してくれる人はいただろうか。


「_____安室さん!子どもたち4人分のオレンジジュース、追加でお願いします」


手が止まっていたところ、彼女のその一言で目が覚めた。


「はい、ただいま」


僕がどんな人間で、何を目的としているのか。そして、なぜ君に近づいたのか。…何も知らずに笑っているその姿から、顔を背けたくなった。









「あーあ、こんなに楽しいから、哀ちゃんも来れたら良かったな」


おかわりのオレンジジュースを嬉しそうに飲んでいた歩美ちゃんは、急に悲しそうな顔になった。


「またいつでもみんなで遊べるよ」


そう言って頭を撫でると、"うん"と少し表情が明るくなった。

哀ちゃんは、何度か会ったことがある。
コナンくんと一緒で、とても大人びた子という印象。


「そういえば哀ちゃん、ポアロに集まる時、いつも来てない気がするなぁ…」

「だよなー」

「そうですよね」


元太くんや光彦くんが賛同する中、カウンターにいる安室さんの動きが一瞬止まった気がした。
…哀ちゃんに、何か心当たりでもあるのだろうかと思った。

そういえば…私も哀ちゃんと出会った時、初めて会った気がしなかったんだよね。どこかで見覚えがあるような、ないような…まだ私が中学生や高校生の時に見覚えがあったような気がする。
でも、そうなると…


「大丈夫ですか?」

「え、あ…すみません、」


いつのまにか安室さんが目の前に来て、心配そうに顔を覗き込んでいて。
平気だと伝えると、安心したように笑い、子どもたちに帰るよう促した。

私もそろそろ帰ろうかと立ち上がると、コナンくんに"ねえねえ"と服の裾を引っ張られた。
どうしたのと少し屈むと、耳元に顔を寄せられた。


「……組織…」

「……」

「…そう聞いて、思い当たる節はない?」

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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