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「もう大丈夫」


固く目を閉じていたけど、その言葉で恐る恐る目を開けた。

肩や腕から血を流し、ホッとしたように笑っているのを見て、また涙腺が弱くなりボロボロと涙が溢れる。
無事に狭くて不安定なエレベーターから脱出できたという安心感、私のせいで安室さんを怪我させてしまったという不安…色んな感情がぐちゃぐちゃになる。


「…ほんと、手がかかる人ですね」


困ったように笑うと、頬に指が触れた。
誰かに涙を拭ってもらったことのない私は、またその行動に心が揺れる。…本当の姿が決して見えない彼の奥底には、何としても人を助けるという想いもあるような気がしてならなかった。


「…腕、止血しなきゃ…」


包帯が無いから、代わりに履いているロングスカートを割いた。
何も無いよりかはマシだろうと、ほとんど条件反射で。


「…っ、別にそこまでしなくても…こんな怪我には慣れて、」

「怪我に慣れるも何もありません。
それに…こんなに国を想って動いてくれる人を、死なせるわけにはいかないから」

「……」


きっと安室さんは、私じゃなくても誰であっても迷わずに助ける人。だからこそ、私もできることをしたいと思った。


「よし…これで、少しは楽になると良いんですが…」


腕にスカートの布を巻いて固定しホッとして顔を上げると、じっと私を見ていて、少し緊張する。


「…ありがとう」


目を伏せ微笑んだのを見て、何故かじわっと胸が温かくなった。















今朝は少し寝坊した。
いつの間にか無意識にアラームを止めていたみたいで、いつも起きる時間よりも40分も寝坊…大寝坊をかました。


「(メイクする時間ほとんどないよ…)」


世の中の全ての女子や女性にとって、朝の寝坊は命取り。

今日はえらく薄い顔になってしまった。
いつもとは違う道を通って行こう…というのも、通学路の途中にポアロがあるから。

あの一躍世間を騒がせた杯戸ショッピングモール爆発事件から2週間、通学路でちょうど安室さんがポアロの前を掃き掃除しているから、ほぼ毎日顔を合わせていて。


"ほんと、手がかかる人ですね"


…あー!もう!!!忘れたいのに!!!


この2週間、思い出しては照れて恥ずかしくなる…の繰り返しで。

初めて会った時やポアロに行った時は、冷静さに怖さを感じる気持ちの方が大きかったけれど、今は…違う。あの一件以来、根底には優しさも持ち合わせている人なのだと、気づいてしまった。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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