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あれからしばらくして、ようやく涙は止まって落ち着いた。


「僕の予想だと後もう一度爆発が起きます」


安室さんは私の頬の涙を拭いながら、確信したように呟いた。


「恐らくもう一度爆発すれば、このエレベーターは完全に下に落ちる。

その前にエレベーターのドアをこじ開け、次の爆発のタイミングで落ちた時に、別の階に飛んで移動する…それには、」

「私が、爆発のタイミングを見計らう必要がある…」


恐る恐る言うと、"その通り"と指を鳴らした。


「…だけど、そんな人間離れしたこと、できますか…?
私はせいぜい爆発の1、2秒前に微かに音を感じることができるだけですし…」


私がそこまで言うと、安室さんはポケットからショッピングモールの地図と思われるものを取り出した。


「それで充分だよ。次に爆発する位置は、大体見当がついてるしね。

その位置から大体何秒くらいでここまで爆風が届くか、それを計算して扉から外に飛び込めば…」


地図を指差しながらテキパキと話し続ける安室さんを見ていると、今日偶然爆発に巻き込まれたわけではないのだろうと直感した。


「……いったい…何者なの?」


冷静に話し続ける彼を見ていて、率直にずっと気になっていたことが口をついて出てきた。


「それは…。…互いに生きて帰った後にでもゆっくりと」


悪戯っ子のように笑った安室さんに見惚れてしまったのは、私だけの秘密。













あれから、ほとんど安室さんの力だったけれど、エレベーターの扉をなんとかこじ開けた。

後は、私が爆発の音や気配を少しでも早く察知できるよう、黙って座って待機することに。…少しでも遅れると命取りになるから、心を落ち着ける。
ふと横を見ると、安室さんは精神統一をするように目を瞑っていた。集中力が私にまで伝わってくるほど。

仮に、今回の爆発が、有名な政治家を狙ったテロだとして…安室さんがそれを阻止するために動いていたのだとしたら。


警察庁警備局…警備企画課…何だっけ…確か、コードネームが…。


「…ッ安室さん…!」


思い出す前に、左耳が音を捉えた。

顔を見合わせすぐに立ち上がり、安室さんは私の肩を抱いた。


「3」


安室さんがカウントする。


「2」


軽く助走をつけ、呼吸を整える。


「1」


…神様、どうか助けに来てくれた安室さんだけは、お助けください。


0(ゼロ)ッ!」


私たちは思い切り外に飛び込んだ。

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柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

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