検索窓
今日:67 hit、昨日:21 hit、合計:119,559 hit

10. ページ11




「やっぱり無理…!!!ただでさえ下が斜めって不安定なのに押し上げてもらうなんて…」

「下が不安定だから僕が支えると言ってるんです。
大丈夫。そんなに心配せずとも死なせやしませんから」

「っ…」


さらっとカッコいいこと言いよる…。
あーでもないこーでもないと言い合ってるうちに、もう何十分も一歩も先に進まない状態で。

下が斜めって足場が悪い中で、今度は反対に安室さんを押し上げようとすると、ため息をついた。


「…仕方がない。…荒技ですが、緊急事態ですから」

「ぅわ、ちょっ、と!」


片手で軽々持ち上げられ、彼はそのまま勢いをつけて上に上がろうとする。


「すとっ、ぷ…!!」


こんなことなら少しご飯を減らしておけば…!!

だけど、どんなにジタバタしてもびくともしないから、良い加減抵抗することはやめ、素直に言うことを聞くことにした。


「Aさん、上に手が届きそうですか?」

「…う、が、頑張ってるけど…もう少し…。

よしっ…届い…っ、」


生暖かい空気が入り込む天井の端に手が届いたところで、また同じ音が聞こえた気がした。


「…どうしましたか?何か…」

「安室さん!!屈んでください…また、っ爆発する…!」

「くっ…」


安室さんはすぐに状況を飲み込んでくれ、私を下ろそうとしてくれたけど、それより前に鈍い音と共に爆風が舞い込んできた。







安室さんは私に覆い被さり、爆風から守ってくれた。

だけど、地面は今度は反対側にガクンと落ち、エレベーターがさっきまでよりも不安定な状態になっているのはすぐに分かった。


「安室さん…っ、大丈夫ですか…!」

「…ッ…これくらい、何ともないよ」

「うそ…っ、だって…だって腕から血が出て…」


ボタボタと血を流す安室さんを見ていると、胸が苦しくなって、涙が込み上げてきた。


「…私を、助けに来たばっかりに…っ、」


昔のように、また自分のせいで誰かが傷ついている…そんな現実と罪悪感に押しつぶされそうになり、涙が溢れて止まらずにいると、不意に頬を両手で包み込まれた。


「僕にはあなたを守る責任がある。
…だからもう、涙を止めてください」


泣いている私を見て、"ふっ"と笑った安室さんは、いつもの爽やかなお兄さんではなく、自信に満ち溢れた警察のような顔をしていた。

どうしてか分からないけれど、その顔を見て、この人のことを信じてみたいと、そう思った。

11.→←9.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (67 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
274人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

柚葉(プロフ) - かえでさん» かえで様。コメントありがとうございます!すみません、今2と3の体裁を整えている関係で一時的にパスワード保護してます!まだ修正が済んでいませんが、読んでる途中に若干体裁が変わるのが気にならなければ、メッセージでパスワードをお送りします!いかがでしょうか? (8月25日 18時) (レス) id: 00a9d1680b (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - シリーズ2個目を読みたいンですけど無理でしょうか?パスワードがかかってるようで (8月25日 17時) (レス) id: bf6f1db929 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:柚葉 | 作成日時:2023年6月18日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。