検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:971 hit

空ノ瞳ノ中デ ページ7

『悪いことをするとね、
お天道さまが見てるんだよ』
君はあの日、そう笑って言った。


今は24世紀
あれから文明は発達したが
人間は多くのものを失った

南海トラフの大地震
富士山の噴火
集団テロ
核実験による人工的な地震

遂には核戦争が起きた

父はイギリスに遠征して、帰ってこない
母はある日、起きたら目を覚まさなかった
妹は僕が守れないままいなくなった
こんな世界で僕の生きる価値は

君しかいない

「空はお天道様の目だからね。
お天道様が見ている。
いずれ、戦争も終わるよ」

「でもさ、僕は分かんないよ。
政府はお国のために働けって言うけどさ、
もし日本が間違っていたら?
戦争ってそんなもんだろ。
それぞれの勢力が
自分達が正しいと思い込んで人を殺す。
殺人者が正義なのかな?
負けた側は悪になるのかな?」

「きっと、正しい方が勝つよ。
子供みたいって笑うかもしれないけどさ。」

でも、悪人が善人を殺すなんてこともあるよ
この世は理不尽なんだよ
それに、正しい、正しくないなんて
誰に分かるんだ?

僕は出かかった言葉を寸前で押しとどめた
その代わりに、言葉を発した

「こんな世界でも、生きていたいって思う?」

「うん。廃れた世界だけど、
やっぱり、美しいや。
もう、草も木も何処にも無いけどね」

君は僕を見た
その澄んだ輝く瞳の中に
僕は何を見たのだろうか

「僕は……今は君といられるだけで、幸せだよ」
そう言うと、君は少し目を見開いて笑った
「ありがとう」
痛々しいほど痩せている顔をほころばせた
命にかけて守りたいと思った
思ったのに…

やっぱり、この世は理不尽だ


僕が食べ物を探しに行ったあの日
また、地震が起こった
僕はみずほらしい小屋まで必死で駆けた
大丈夫。地震なんて何度も起きてる
いつだって大丈夫だったじゃないか
それでも、心臓の音は止まらない
そして、やっと小屋を目にした時
僕は乾いた大地に立ち尽くした

小屋は倒壊していた
砕けた木の隙間から
ひん曲がった君の腕が見える
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕は叫んだ
火事場の馬鹿力か、情けないほど細い腕でも
重い瓦礫を退かすことができた

僕は君の体に触れた
その体は酷く冷たかった

これが現実

これがこの世界だ

何で?
この世界が好きだと言った君が!
世界のせいで!
君は!

乾燥した大地がポツリと濡れる

頬を伝う涙を止める術を
僕は知らない


次の日、あの町に核爆弾が降った
憎いくらいの晴天で
お天道さまは何を見たのだろうか

淡雪→←虹



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:オリジナル , 短編 , , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鸞鳥 | 作成日時:2020年7月6日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。