●スメル・ケシ ページ26
そして、出会った人がいた。
「私はここらへんを縄張りとしている罠猟師です。あなたがたは?」
シンはその男の振る舞いに、違和感を覚えた。
先程通った町の人々とは少し違う訛りに
どう見ても、大人だが、成人ノ儀の印が頬にないこと。
さらに、確実に男は武人の気配がする。
その道を極めたものには言葉にならぬ格があるのだ。
“この男はケルト王国の密偵ではないか?”
彼の直管が告げていた。
シンは一か八か、ケルト語で話した。
「俺はシン。トラル帝国の捕虜にされていたが、脱出してきた」
もし男がトラル帝国民なら、わからぬ筈だ
だが、男は目を輝かせた。
「俺はケルト王国の密偵だ!逃げ出してきたのか!?」
「ああ、国家機密を盗んできた」
「なんと、なんと!
その故国の言葉を聞き、シンは顔を綻ばせた。
「俺はイネス・サフィア。あんたは?」
シンは差し出された手をがっちり握った。
「俺はシン・ハセア。こっちはアンサンのトッツ・ケイヌ」
「どうも、トッツ・ケイヌです」
トッツはアンサン語で言ったが、イネスにはわかったらしい。
笑顔のまま、2人に言った。
「ついてこい!俺は船を持っている!このうっとおしいこの帝国から脱出しよう!」
「
トッツはアンサン語で言った。
インサンの案内で、シンたちは海岸へと向かった
三人は船に乗っている。
運良く、追い風に乗ることができ、船は帆をいっぱいに広げて広い海原を進んでいる。
だが、帆船が追ってきた。
「もう、バレたのか…」
インサンは言った。
「流石、トラル帝国だな。あの帆船は小型で、すぐに追いつかれるだろう。どうする?」
「決まってるさ。逃げるだけじゃ、奇襲を喰らう。俺たちがしなくてはいけないことは……」
シンは言った。
「なるほど、いい案だ!」
「早速、結構するか」
時は夕暮れ。
夕日の光を浴びて、帆船が東から近づいてくる。
シンの作戦はこうだ。
手近な島の裏側に上陸する。
そして、帆船が東から来るように仕向ける。
夕暮れ時だから、帆船は逆光でシンたちが海岸にいることに気が付かないだろう。
帆船が上陸したら、きっと帝国兵は島を探す。
すると、帆船には人があまり残らないはず。
その隙に帆船に乗り込み、帝国兵を捕縛する。
それを今、決行したのだ。
小さな帆船に乗っている人数はおよほ30ほど。
そのうちの20は出ていっただろう。
シンたちは隠れていた茂みから顔をだした
作戦決行だ。
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作者名:鸞鳥 | 作成日時:2020年7月6日 18時