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■文 ページ11

ツ━━とイアンの額を汗が流れる

先に動いたのは男だった

喚きながら、刀を投げて
イアンの体にのしかかる

刀がイアンの衣を切裂き
イアンは首をすくめた

分厚い衣なため、肌には達しなかったが
その感覚は心を凍らずようだった

イアンと男は横向きに倒れた
男の肘がイアンの脇腹にめり込み、呻いた

イアンは男の腹を蹴り、その勢いのまま
足を振り上げ、男の顎の急所を膝で蹴る

男の動きが止まった隙に、
イアンは男の耳の下を短刀の柄で叩いた

男は音もなく気絶した

立ち上がって、息を整えると
男の長靴の紐を抜いた

それで男の手首の上を縛ると
荒縄でもう一度男を縛った
猿轡を噛ませ、近くの木に括りつける

何か襲ってきた者の情報はないかと
男の上着を丹念に調べると
一通の文書が出てきた

“望月いで来たりし日の暁の空は
見るのに値せしものなり
誠に勝手だが、近々セロ街の酒場で
ローク酒でも飲みながら
共に見ようでないか
返事をお待ちしている

ヌハール”

その最後の書名を見て、イアンは首を傾げた

字が拙い
名前が南部の方の名のようだ

それに、
「暁の空」に「望月」など見えない

あまりにも妙な手紙だ


南部……

隣国サハレンのものかもしれない

あまりにも突飛な考えだが
ソウ思うとストンと腑に落ちた

サハレンとは長い間、国境線を争っている

この少女__Aは
機密情報でも知ったのではないか?

だから、サハレンの手の者に
追われてるのではないか?

イアンは溜息をついた

まずはAの生死の確認をしなくては

あるきだすと、脇腹がズキズキと痛む

しばらく歩くと、馴染んだ馬の
獣の匂いがして、Aと馬がいた

逃げ出したイアンの馬をも
捕まえてくれたのだろう

Aは軽く息を吐いていた

『怪我は…!怪我はありませんか?』
「案ずるな、大丈夫だ」

酷く心配げなAと対照的に
冷静な様子のイアンに
落ち着きを取り戻したのだろう

Aはイアンの馬の轡をイアンに渡した
「状況が変わった。
セロ街へ行くぞ」

それから、Aに先刻の出来事を
手短に伝えた

Aは頷いて馬に跨った

2人は馬を走らせ、
イアンのマントが風にはためいた

凍える風はいつの間にか
暖かく、優しく変わっていた

■衝撃→←■奇襲



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作者名:鸞鳥 | 作成日時:2020年7月6日 18時

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