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13節目 ページ30

焼けるような痛みを頬に感じて、琉美は床に倒れこんだ。

どうやら口の中も切れてしまったようで、鉄の味がじんわりと舌に広がってくる。

からん、とナイフが乾いた音を立てて床に落ち、動きを止める。

「この馬鹿者が!!」

響いた声は、怒りに打ち震えて、悲しそうに不安定なものだった。

そちらを見ると、張り詰めた表情で、一人の少女が琉美を見下ろしていた。

クリーム色のふわふわの髪は、急いで走ったのか、ところどころがもつれている。

緑と黄色、双方で違う色の瞳は、まっすぐに琉美を見ていて、

いつもは微笑を浮かべているはずの口元は、泣くのを堪えるように、ぐっと歪んでいた。

少女は膝をつき、琉美の方をつかんで、俯いて一言呟いた。

「馬鹿者が……。」

暖かい声。

心配した、という気持ちが、ありありと伝わってくる呟きだった。

「ルムジム、さん。」

名前を呼ぶと、ルムジムは、ほうっと息を付いた。

「あまり驚かせてくれるな、ミア。」

「なんで……。」

琉美は呟いて、ルムジムをぐいと押しのけようとした。

「なんで、なんで、放っておいて。いらない子だから。意味がない子だから。いらないから。」

幼子がいやいやをするように、琉美は首を左右に振って、そんな言葉を繰り返す。

琉美はうしろの方に飛んでいったナイフを手繰り寄せようと手を伸ばすが、

ルムジムがその手をやんわりと、それでもしっかりと握って止めた。

「ミア。」

ルムジムが琉美の腕を引き寄せ、幼子にそうするように、抱き締めて背中をぽんぽんとたたく。

「おんしが、いらない子なものか。いらない子であったなら、見舞いになど来るものか。」

「でも、お母様は、いらない子だって。」

「おんしのお母様にとってはいらない子でも、わしにとっては友達じゃ。死なれるのは、困る。」

「嘘だよ。だって、私、皆から奪っていくの。夜美からも、きっと友達からも。」

「嘘ではない。」

「嘘だよ。みんな、優しいから。こんな私に、優しくして、ホントは。」

「ミア。」

ルムジムが、少し強く琉美を呼んだ。

ぎゅ、とルムジムの手に力がこもった。

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設定タグ:魔法少女は星に詠う   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ゆずぽん(プロフ) - 実麗@受験生(建前)さん» あああ、ありがとうございます!そう言っていただけると幸いです……! (2017年11月26日 22時) (レス) id: 557f97ce01 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@受験生(建前)(プロフ) - ゆずぽんさん» いえいえ!格好いいアクションシーンに一役買えただけでも嬉しいですし (2017年11月26日 18時) (レス) id: 58144b90d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - 実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだったさん» ありがとうございます!折角貸してくださったのに、出番少なくてすみません・・・・・・。 (2017年11月26日 17時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだった(プロフ) - 完結おめでとうございます!アンタレスを使って頂いてありがとうございました〜*^^* (2017年11月26日 9時) (レス) id: 80fcad1283 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - ありがとうございます!使わせていただきます! (2017年11月11日 20時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずぽん | 作成日時:2017年9月13日 0時

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