a.1 一章一話 ページ6
放課後、屋上へ向かう。
途中で、去年に委員会でお世話になった先輩に遭遇した咲羽は、もしかして先輩も、
と話しかけると、彼女は神妙な顔でうなずいてくれた。
少しだけ逸る心臓を抑えながら、咲羽は屋上の古びた扉をギィ、と音を立てて開ける。
「あれ、牡丹ちゃんに咲羽？ 二人も〜？」
その朗らかな声は、同じクラスの、楽蓮弥生だ。
やや頂点部分がグラデーションになってしまったマリンブルーの髪を揺らしながら、
彼女はいつもどおりの口調で言った。
初日にまさか、とは思ったが、彼女もだったなんて。
咲羽は仲の良い友人が、このことを理解してくれていることが、とても嬉しく、心強かった。
牡丹、というのは、先輩の名前だ。
淡い色の髪をふわふわと揺らす、優しい先輩である。
数人集まって、人の波が止まると、マリーゴールドのような髪の上級生が、
パッと立ち上がって話し始めた。
「もしかしたら他に『ループ』した奴がいるかもしんないけど、とりあえず自己紹介するな！
俺は天野修二、二年二組だ。」
元気のよさそうな人だ。
スラリとした夏目レイカという女子生徒は、化粧やピアスをしている割にはとても礼儀正しく、
暁永春陽と名乗ったか弱そうな男子生徒は、ヘーゼル色の目を眠たげに伏せた。
偶然その隣にいた咲羽は、少しあわてて自己紹介をし、軽く頭を下げる。
咲羽と一緒に屋上に来た治原牡丹は、柔らかそうな髪を揺らしながら、たおやかに、
うっすらと隈が出来ている滝上奏音は言葉少なに、自らの名を名乗る。
この二人はどちらも、咲羽の委員会の先輩だ。
毛先が跳ねた鼠色の髪の生徒は北條一葉と名乗り、
最後には咲羽と同じクラスの楽蓮弥生が朗らかに、ゆったりとした口調で話す。
この世界が、2017年を繰り返していることに気がついた人たちだ。
しかし、具体的にどうすればいい化などは、誰も思いつかない。
当たり前である。
こんな経験をしたものなど、アニメや漫画や小説の中にしかいないのだから。
皆が頭を悩ませていると、不意に、背後から愉快そうな男の声がした。
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作者名：ゆずぽん | 作成日時：2018年5月1日 22時
