君を待ってる ページ49
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『待ってるから、ずっと、帰ってくるの待ってるから』
「…A、」
『…だから絶対どっかで彼女作んないでよ』
「…こっちのセリフやアホ。優太のこと好きになるなよ」
『それは絶対ならない』
「ジンも?玄樹も?海人も?…紫耀も?」
『ならないって』
優しく肩を押されて大人しく廉の元から離れた。
私だけ泣いていると思ったが廉の目にも涙が溜まっていた。
「…遠距離なっちゃうけど、俺と付き合って?」
『…うん。』
「ほんまに、待っててくれる?」
『なんで疑うの?…10年間待ってたんだから、待てるよ』
10年間、待ったんだよ。
こうなるのをずっと、待ってたんだよ。
廉にも伝わったのだろうか、目に溜まっていた涙が一気に零れ落ちた。それに釣られるように私の止まったはずの涙がまた、溢れ出した。
「…うん、せやな、俺ら10年間待ったもんな」
『…う、ん』
「絶対迎え行くから…空けとけよ、薬指」
『…わかってるよ、』
廉の綺麗な顔がゆっくりと近づいてきたので促されるように目を瞑った。
どうなるかは、分かっていた。
心から好きだと、大好きだと思える人とキスをしたのは初めてだった。
「…これ、俺のファーストキスな」
『…ごめんって』
「俺はずっと恨むで」
『…本当のこと言うと私近藤とキスしたことないよ』
「…えっ、じゃあファーストキス…」
『うん、優太』
「…はぁ!?」
あの時なんとなく咄嗟に嘘をついていてよかった。あの嘘があったおかげでなかった時よりももっとずっと優太に恨みが行くだろう。それはちょっと面白い。
しばらく笑っていると不貞腐れた顔をした廉がまた私の口を塞いだ。
『…なに、』
「ちょっと聞いてもええ?」
『うん?』
「…俺のこと、どう思ってる?」
ふと時計を見た。
世界は、人の情など知らずに回っているらしい。
そういえばあの日もこの公園だった。
あの日は逸らしてしまった視線を廉に向けて答えた。
『大好きだよ』
廉のお父さんはもう向こうに着いているらしかった。
空港にお見送りは行かなかった。
小さくなっていく車をじっと見つめていた。
お母さんはそんな私を見て何も言わずに家へ帰った。
必ずまた逢える。
約束したんだから、彼は逢いに来てくれる。
車が見えなくなったのを確認してから、学校に戻ろうと踵を返したのだった。
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます!読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます!!!!!!一生のお願い!笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます!afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです! (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます!最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです!楽しみにしています!! (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚木 | 作成日時:2019年10月16日 22時