じゃない ページ35
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『…』
「ちょ、閉めんな閉めんな」
テスト明けの休みはどうもゆったりしてしまう。今日もお昼頃に起きてぐうたらしていたらピンポーンどころではない、ピンポンピンポンピンポンというバグのような音で頭が覚醒した。そういえば、今日は大ちゃんが永瀬の家に泊まりにやってくる日だった。
なんだか、デジャブだ。
嫌な予感を感じつつ恐る恐る扉を開けば案の定永瀬がそこに立っていた。
『…なに、』
「大吾もう来てんで」
『…ほんと!?…でも夜行くわ』
「だー、閉めんなっつーの!」
そこまで不貞腐れている訳では無いが思いっきりむすーっとした顔を作る。
とにかく帰って欲しい。髪はボサボサですっぴんだ。いつもは色付きリップをしているが何もしていない今の私は幽霊のように血色が悪いはずだ。
『なに、なんなの』
「大吾がもう会いたい言うてんねん。だから迎えきた」
『わかった、支度するからそこどいて』
「おう、邪魔すんで」
『…は????』
この前もそうだったけど彼はお邪魔します、じゃなくて邪魔するよという声で入ってくる。
私に拒否権はないのだろうか、邪魔すんでという言葉を言い終わる頃には玄関へと入り込んでいた。
『…あのねぇ、』
「寝癖」
『え?』
「…かわいい」
立ち尽くす私の頭を優しく2回ほど撫でて彼はリビングへと向かっていった。
未だに永瀬の感触が残る箇所を自分で触ればぴょこんと髪の毛が主張していた。羞恥心が一気に私を襲いしばらくその場からは動けなかった。
なんで、こんなにも永瀬を意識しているのだろう。
私の後ろにある扉の向こうにいるはずの、見えないはずの永瀬にこんなにも胸が高鳴るのは何故だろう。
その答えはもうわかってるはずなのに、やっぱり溶けきれない壁があって、そこにはくだらないプライドもきちんとあって。
好きじゃない、好きなんかじゃない。
分からないだけなんだよ。
永瀬がいるであろうリビングに、ひとつ大きなため息をついて足を勧めた。
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます!読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます!!!!!!一生のお願い!笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます!afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです! (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます!最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです!楽しみにしています!! (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚木 | 作成日時:2019年10月16日 22時