キス事情 ページ30
.
「じゃあもうちゅーもぎゅーも済ませとんの?」
『いや言い方…まあ、ぼちぼち?』
「は、ちゅーしたん、?」
『、だからしたって。』
先程の威勢はどこへ行ったのやら、永瀬は私のキス情報を聞きへなへなとしゃがみ込んでしまった。心配になって私も彼同様に屈むと「俺やってキスしたことないのに…」とブツブツと言っていた。
『…そんなに私がキスしたの嫌なの?』
「嫌に決まっとるやろ!!」
『ええなにそのライバル心…あ、キスなら優太ともしたことあるよ』
沈んでいた顔がばっとこちらに向けられた。
その顔はなんというか、めちゃくちゃ驚いていて笑ってしまう。
「は、え、ゆうたってどっち?じん?優太?いやどっちも許さんけど、しばくけど」
『私がゆうたって言うのは優太だけだよ』
「じゃあ優太?」
『うん』
「な、な、なな…」
『まあ、事故だけど』
いつの日だったか、こちらに走ってくる優太の足を海ちゃんが引っ掛けたら思いっきりずっこけて私の上に乗っかってきて。
ふに、と唇に何か当たったもんだから何かと思えば優太の唇で。あれほどまで笑った事故はない。
海ちゃんも、優太も、私も。
授業中も思い出し笑いをしてしまい何度も三人で怒られていた。懐かしい思い出だ。
永瀬が不安そうな顔でまたこちらを見てきた。
なんだか、耳がしゅんと下がった子犬のように見えた。
「お前らって付き合っとんの?」
『いや、事故だよ?』
「…ほんまに?」
『…なんで疑うの?優太とはそんなんじゃないよ』
私の答えを聞いて安心したのだろう。下がりきっていた耳がピンと上がったのが分かった。
す、と立ったと思えば手を貸そうとしてくれてるのだろうか、手を伸ばしてきた。
自分で立てるけどな、と思いつつその手を借りる。
私が立ったのを見て手を離した永瀬はそのまま転がっていたコップを手に取った。
「ちゅーまで?」
『ん?』
「近藤としたの、ちゅーまで?」
『…セクハラ』
「それ以上はしてないよな?な?」
『してるわけないでしょ、中学生だよ?』
「ん、ならいーわ」
『だからなんでそんなに私に勝とうとすんのさ』
「そういう意味ちゃうわ。嫌、やん。そんなん」
『…そういうのさ、私じゃなきゃ勘違いされるよ』
永瀬の前を通って食卓に放置していたパスタとフォークを置いた。永瀬の視線を感じながら「いただきます」としっかり手を合わせた。
912人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます!読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます!!!!!!一生のお願い!笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます!afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです! (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます!最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです!楽しみにしています!! (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚木 | 作成日時:2019年10月16日 22時