アゲイン。 ページ3
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──…はて、私は彼に謝られるようなことをしただろうか。
「きりーつ」という学級委員の気だるそうな声を合図に授業が始まったにも関わらず私はたったのひらがな3文字に頭を悩まされていた。
思い当たる節はあるが随分と昔の話なのだ。
どちらが悪いなんて覚えていない。
お互いに意地を張り続けた結果が今のこの状況で。
ごめん、の下のスペースになにが?と書こうとしたがその手を止める。
よくよく考えれば彼がもう一度私に教科書を借りに来ない限り私が返信を書いたところで意味を持たない。
まあ、いっか。
授業に意識を戻そうとしたが時すでに遅し。
molとかもうわかんない。
とりあえずプリントの穴埋めだけ写してこの日の授業は終わりを迎えた。
*
「あ"ーーーー。相変わらずアイツ話なげぇ。
『はは、LHRは
「うわ、そうかも」
放課後、私の支度を待つ優太を傍らに鞄に教材を入れる。
その際にふと、化学の教科書に手がかかる。
んーー、明日授業あったっけな。覚えてないや。
試験近いし持って帰ろうかな、と思ったが重たい鞄と一緒に電車には乗りたくないので全教科ロッカーへとぶち込んだ。
その頃にはすっかり彼からのメッセージは忘れていて。
いつも通り優太と共に学校を出ていつも通り帰り道にいい匂いを駅で漂わせるパン屋を見ながら帰路についたのだった。
その翌日、永瀬と目が合ったことにより昨日の記憶がフラッシュバックした。
…まさか、いやいやまさか。
「A」
『は、はい』
「教科書貸して」
『…え?』
彼──永瀬は私の予想に反し昨日よりも清々しい笑顔で私の名前を呼び、教科書を受け取るために右手を差し出してきたのだった。
『な、なんの?』
「化学に決まっとるやん」
『…また?』
「うん。また。」
『あ、うん、まってて』
この行動は、なんなんだろうか。
…わざと忘れてきた??
いや、永瀬にとってそんな事ありえない。
ぐるぐると自問自答を繰り返すが結局わからずにそのまま私の教科書は永瀬の手へと渡りどこか嬉しそうな永瀬はそのまま自分の教室へと消えていった。
ええ〜…わからない。
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます!読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます!!!!!!一生のお願い!笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます!afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです! (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます!最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです!楽しみにしています!! (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚木 | 作成日時:2019年10月16日 22時