数学の時間 ページ12
．
「tanθがここならsinθはここやろ」
『…無理』
土曜日、なんの前触れもなくやってきたこの人。
両親とも仕事に出かけており私しかいないこの家に来客を知らせる音が鳴り響き何か届いたのだろうか、と慌てて玄関へ出れば昨日の気まずさが嘘のように「よっ！」と笑う永瀬が立っていた。
何しに来たのだと問えば教えに来たと答えた永瀬。
確かに今先程まで数学と化学に頭を悩まされていたので渋々家に上がらせることにした。
キョロキョロとする永瀬を私の部屋の小さなテーブルのところに座らせ麦茶を持ってくる。
そうして、永瀬主催のテスト勉強が始まったのだ。
「ほら、これ、あれ使えるやん。相互関係の式」
『cos²θ＋sin²θ＝1？』
「それ。やってみ。」
永瀬からの視線を感じつつノートに公式を使い当てはめていく。
するとあらビックリ。
先程まで全くと言っていいほどわからなかった問題がすんなりと解けてしまった。
『…永瀬なんでこの学校いんの？』
私が出した答えに丸をつける永瀬に問いかける。
永瀬の学力は学年トップだ。
この高校は特に進学校でもなんでもないのに、他に永瀬に見合った高校があったはずなのにわざわざ大阪からこの学校を選んでやってきたということになる。
「…知りたい？」
『まあまあ。言いたくないなら別にいいよ。』
「ふは、別にええよ。…放っとけない奴がおったからな」
『…』
「それに、あのまま離れたらもう二度と戻らん。…そうやろ？」
『さぁ、』
彼から戻されたノートを受け取りながら曖昧に受け流す。まだ永瀬が家に来て1時間ほどしか経っていないのに範囲の問題は全部制覇した。教え方がうまいのだろう。
丸も汚いんだなと思いながら数学関連のものを仕舞いベッドに雑に散りばめられたままの化学のプリント類を取ろうと手を伸ばした。
「そういえばお前化学壊滅的やったな」
『化学反応式とか、ちょっと嫌い』
「うん。教える」
『ごめん、テスト前なのに』
「いいよ別に」
見して、と私からプリントを、例のテストのプリントを取る。そんな彼の視界に写るように今までのテストを全て出した。
「全然ダメやん」
『molだけは出来なくて、』
「過不足あるやつとかむずいもんな」
『うん』
「じゃ、やろっか」
私の手元にある真っ白の問題演習のプリントを覗くように肩を寄せ合う私たちの蟠りはいつ、解けるのだろう。
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます！読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (
レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます！！！！！！一生のお願い！笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます！afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです！ (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます！最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです！楽しみにしています！！ (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚木 | 作成日時：2019年10月16日 22時
