嫌悪 ページ7
確かに、遣ると云うより殺るだった。
苛烈な治療は云った通り三十分後、きっちりと終わった。
途中、其処は本当に切るべき場所なのか?と思ったが医者が考える事なんて私には想像もつかない世界だ。
何も考えない方が倖せな時もある。
『あ、ありがとうございました』
「善いンだよ、妾も久々の治療だッたからねェ。色々と見たいところ見れた」
『矢っ張り内蔵を掻き回………』
否、云うの止めよう。聞きたくないし、知りたくない。
ふらりと立ち上がって鏡を覗き込むと、其処には傷一つ無くなった自分の顔。もう、包帯は要らないな。心の中でほっとした。
あんな顔では親族にも顔向け出来ない。
少し華族でぼんぼんだからって、あの人たちは汚いものを嫌うのだ。
(母さんがあの家から逃げた理由もわかる)
あんな襤褸いアパートに住んでいたのだから、大方そういう予想は付いたし、恐らく下流階級の父と駆け落ちでもしたのだろう。
私でも、彼処からは直ぐに逃げた。
肩身が狭い思いはあまりしたくない。
「Aは調査員にはならないのかい?」
与謝野女医がいきなりそんな事を云う。
そうだ、この人は私の異能を………
「どんな異能かは知らないけどねェ、人の役には立つだろうに。
其れにAは事務より調査の方が本領発揮出来そうだしねェ」
与謝野女医は巫山戯て笑う。
だけれど、声は本気だ。本気で、調査員に誘う顔と声。
お誘いは嬉しい。…でも
『すみません、私は事務仕事が性に合ってますし………異能はもう、使わないと決めているんです』
悩ましげに眉が寄る。
自然と顔が緩んで少し笑った、真顔で断るよりはマシであろう。
「……へェ。ま、強制はしないサ。
異能に一つや二つトラウマや嫌悪はある訳だしね。厭な思いをして迄、仕事はするモンじゃない。」
与謝野女医は残念だと云って私を昇降機まで見送ってくれた。最後の最後まで愛想の良い綺麗な笑みを絶やさず、手を振っていたのを見て、少しだけ(あんな人になれたら、)と考えてしまう。
だが、無理な話だ
「……そりゃ、妾にも異能に嫌悪はあるサ」
その声は私に届かず、与謝野女医の躰に響いた
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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています! (2020年9月27日 23時) (レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
愁(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 更新、楽しみにしています! (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
和 - イッキ読みさせていただきました!とっても面白いです!これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒蘭夢 | 作成日時:2017年2月23日 3時