知るべからず ページ35
『ではこれで失礼します。ありがとうございました』
「また来てちょうだいね」
顧問の声を後にし、弓道場から出る。これから向かうところも思いつかないので探偵社に行くかと思いつつ歩みを進める。
「あのっ志賀先生!」
はたと呼びなれない呼称付きで自分の名が呼ばれ、背を向けていた弓道場の方を振り返った。
『君は…』
先程の射手の子だ。篠原茜の事を顧問に尋ねていた子でもある。長いポニーテールをふわりと揺らさせて道着のままその子はこちらに来た。
ただの見学者である新任に何か用があるのか、確かこの子のクラスは受け持っていなかったはずだ。
「あの、茜…篠原ってわかりますか?」
『篠原さんならご存知ですよ』
「もし良かったら、なんですけど…見かけたら部活に来るように伝えて頂いてもいいですか?」
『ええ、わかりました。見かけ次第伝えておきましょう』
そう返せば、射手の子(名前はわからない)はパッと顔を綻ばせて「ありがとうございます」と頭を下げた。礼儀正しく、運動部らしいハキハキとした快活さを感じる。
するとその子は顔を上げると、何だか物言いたげに視線をこちらにやった。
「志賀先生は…知らないんですよね…」
『……何がですか』
また、か。
仲田も知らなくてもいいこと、を仄めかして言葉を濁していた。この少女もまた私に何か伝えようとするのだろうか。
「…茜、最近 妙にそわそわして落ち着きがなくって何か悩み事があったのかもしれないんです」
『悩み事、ですか…』
「志賀先生はご存知ないとおもうんですけど、この学校には噂があって…」
「ちょっと!何やってるの!!」
つかつかと足音を立ててこちらに歩み寄ってくる顧問に、射手の子はびくりと肩を震わせる。
そういう私も声に驚いてびくっと跳ね上がった。
「志賀先生はお帰りになられるのよ!何時までも引き留めてちゃ駄目じゃない」
「はい、すみません。……志賀先生、よろしくお願いします」
そう言われ、射手の子と顧問は弓道場へと戻っていく。
よろしくお願いしますという声が後を引いた。
射手の子が篠原の話と学校の噂を結び付けたということは、つまりはそういうことだ。
篠原茜が、学校の知ってはいけないことを知ってしまった可能性がある。
何故私にそれを告げようとしたのかはしらない。だが、まだ校舎にいるなら話が聞けるかもしれないと、思い、篠原茜のクラスへ向かった。
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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています! (2020年9月27日 23時) (レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
愁(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 更新、楽しみにしています! (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
和 - イッキ読みさせていただきました!とっても面白いです!これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒蘭夢 | 作成日時:2017年2月23日 3時