無茶 ページ26
『太宰さんって、高校の勉強まだ覚えていますか？』
箸に挟まれていた味噌汁の具がぽちゃりとお椀の中へと落ちる。
太宰さんは｢へ、？｣と間抜けな顔を晒して、苦笑いをこぼした。
｢まあ必要最低限なら…ああ、Aちゃん潜入捜査について引き受けちゃったんだ｣
会議をさぼった太宰さんは、たった今知ったらしく(当たり前だが)頭を抱える。
『調査員になるのは丁重にお断りさせて頂きましたけど、それは断りづらくて』
今考えると、あのピリピリとした空気は社長にとっての不安を表していたのかもしれない。
私が引き受けたら緩んだ空気、安堵なのか。
途端、太宰さんが大声を出した。
｢えっ？！調査員？！何それ聞いてないよ？！引き受けなかったんなら良いけど｣
危ない事勧めるな──…太宰さんは肉をぱくりと口に含んで眉を顰めた。
心配してくれるのは、嬉しかったし、有難がったので何も云わない。
｢私達は、学校に入ることすら認可して貰えなかった｣
太宰さんはポツリと呟いた。
当初では、武装探偵社の名を背負った調査員を派遣するという話で通っていた。
実際その学校の校長からの許可を取っていたのだが、つい先日、"我が校に貴方がたが出入りしていれば学校の名に傷がつく"と断られてしまったらしい。
それは、あまりに急なキャンセルだった。
｢敵に精神操作の異能者がいないとも云いきれない。私達が学校に入ることが叶わないけれど、君にはGPSと、君の護衛として遠くから見守ってるよ｣
『用意周到な事で何よりですけれど…見張りは下手したらバレるんじゃ』
｢谷崎くんの異能でどうにか｣
『貴方無理でしょう』
｢ぐっ……で、でも前職で散々気配遮断は体に叩き込んだし…！！｣
よし！いける！小さくガッツポーズをした太宰さんが子供みたいで暖かい目で見ていると、その事に気付いたのか、少しだけ頬を赤らめた。
｢あっぜ、前職で思い出したんだけど｣
あせあせと話を逸らすのに必死そうだ。
｢ポートマフィアが今回の事件に介入してくる恐れがあるっぽくてね｣
『確証は？』
｢ポートマフィアの傘下企業の動向をちょーっとばかし窺ってたら、人身売買のルートを見つけちゃってねぇ…8割ぐらいかな｣
ほぼの確率で介入してくるのか…聞いても聞かなくても同じ結果だったとは思うが、聞いただけ気持ちがげんなりする。
はあ、と溜息を吐いた。
『無茶はしないでくださいね』
私が云えたのはそれだけだった。
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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています！ (2020年9月27日 23時) (
レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
愁(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 更新、楽しみにしています！ (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
和 - イッキ読みさせていただきました！とっても面白いです！これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒蘭夢 | 作成日時：2017年2月23日 3時
