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一言で ページ16

ひゅうっと窓から入った南風が吹いて髪が揺れる。
夏空は綺麗なほど真っ青で、目が潰れるほど太陽は眩しい。
そしてなんといっても日本独特の湿気と蒸し暑さはどうにも好きになれそうにはない。

いつの間にかこの国は、夏という季節を向かい入れていた。



「あーーーつっい!アイス!アイスが食べたいよ国木田くん!!買ってきてよ!」

その暑さに比例するかのような怠さを存分に含んだ声色で叫ぶ太宰さん。
袖の捲られたワイシャツに、だらりと締まり無く垂らされた腕は、暇を持て余しているかのよう。実際まだ解決してない連続誘拐事件のせいで、全然暇ではないのに。

「黙れないのかこの唐変木。今の貴様にアイスを食う資格等無い!!!」

暑さのせいで何時もの倍苛々している国木田さんの怒号も響く。
漫才、と云っても可笑しくはない二人のやりとりが聞いているだけで少々煩わしいのは否定出来ない。

「Aちゃぁん…国木田くんが虐めるゥ…」

『おや、それはいけませんね。太宰さんの夕食は今晩抜きにしましょう』

「え''っ?!私?!私が咎められるの?!」

おかしいよー!!おかしな話だよー!!
太宰さんが講義を入れてくるが聞かないふりをして作業の手を進めると、少々不貞腐れた太宰さんがむう…と膨れっ面を作った。

「ゆうしょく…?お前ら一体何の話をしているんだ?」

何も知らない国木田さんが首を傾げる。
あ、と思ったが平静を装い『さあ…』と曖昧な笑顔を貼り付けて其の場しのぎに何とかした。


「ねえ、Aちゃん、良い花屋知ってない?」

『花屋?』

急にどうして花屋なんだ、少し訝だんだ目で太宰さんを見る。国木田さんは相変わらず鬼の形相だが、少し冷静になって業務に戻ったようだ。
花屋か……真逆百合の花で自 殺するとかじゃないだろうな…あ、これは前に試して失敗したと云っていたか。

『良いと云えるかわかりませんが…花屋なら一件知っていますよ』

「本当?良ければ教えてくれないかな」

『花屋の一件や二件幾らでも教えますが…どうか、したんですか?』

妙に陰る太宰さんの表情に、思わず訪ねてしまう。その表情は死相そのもので、ほっといたら死んでしまうのでは無いかと心配になった。


「何も無いよ。ただ一寸、花が必要になっただけさ」

被害者→←人身売買



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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています! (2020年9月27日 23時) (レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 更新、楽しみにしています! (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
- イッキ読みさせていただきました!とっても面白いです!これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒蘭夢 | 作成日時:2017年2月23日 3時

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