人身売買 ページ15
【another】
地中深く、日も当たらない様な所でマフィアと云う人種は活動する。
暴力と血の世界だが、時に殺すだけでは解決しない問題も少なくは無い。時に今直面している厄介事も荒仕事だけでは済まなそうなのだ。
｢最近、私たちの庭を荒らす輩が鼻に付くねぇ｣
草臥れた笑顔を貼り付け、ポートマフィアの長である森が資料数枚を手に取った。
誘拐事件、人身売買、この二つが今、ポートマフィアの悩みの種。
軍警も動いているとは云うが、名ばかりの調査。一般市民は騙せるけれどもこういう業界からしたら蟻の散策程度なもの。期待はできない
｢誘拐や人身売買を行う組織について調べては見たものの、組織の全体図がほぼ闇の中と云って云いでしょう。｣
中原は立ち上がって自身が用意した資料を、も資料も元に経過を告げた。
これを調べ上げまとめるのに相当の時間を要したのが伺える顔色だ。
｢一度、誘拐の現場を取り押さえ、拷問させましたが日雇いらしく、ろくな情報は無し。長の顔よろしく、その日共に業務をこなしていた同僚の本名さえ知らない始末でした。｣
紅葉がほほ、と着物の端で上品に口を隠して笑うと｢忠誠もまるでない輩が憚る組織は早咲き故に早う散る｣と小馬鹿にして目をすう、と細めた。
中原はそんな紅葉を見て、薄く笑みをたたえゆっくりと肯定の意を持って頷く。
｢恐らく、実行犯は日雇いを四から五人の構成かと。
組織内の情報を漏らさない為の、一番合理的な遣り方です。｣
｢どこでどう拷問されようと何も吐けず終い…否、吐く情報すら持ち合わせていないとは悲しいことだ｣
森が言葉に反して、にこやかに笑うと室内の温度が少しばかり下がった気が中原はした。
まだそこ迄しか出せてないのかい？と無言の圧力をかけられている様でいたたまれなく、次の資料を提示した。
｢人身売買のルートに、ポートマフィアの大手スポンサー、及び、参加組織が複数関わっています｣
｢ふむ、向こうも考えよったのォ…ポートマフィアの身内を手の内に入れるとは｣
｢今解っているだけで二社ですが、これから更に洗えば幾つか出てくるかと｣
首領である森は笑顔を崩さす、エリスにあげるのだと買った小物を人差し指で弾いて書類を並べて、中年独特の草臥れを出した。
｢太宰くんが居てくれたらねぇ…｣
森にとってその言葉に深い意味は無かっただろう。だが、太宰が組織を去った理由を俄程度に知ってた中原は、呆れた人だと内心溜め息を吐かずにはいられなかった。
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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています！ (2020年9月27日 23時) (
レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
愁(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 更新、楽しみにしています！ (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
和 - イッキ読みさせていただきました！とっても面白いです！これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒蘭夢 | 作成日時：2017年2月23日 3時
