26 ページ28
撮影用にスタッフが支えていた照明が
バランスを崩し、こちらへ倒れてくる。
私はとっさにあの女の手首をつかみ、
安全な場所へ引っ張る。
バランスを崩して倒れるけど、
自分の上にあの女が来るように。
「ちょっと、何すんのよ!!」
感謝の言葉も発さないこの女。
現場全員の動きが止まる。
これは、チャンスだな...
元男性アイドルの本気、受けてみろ。
『怪我はありませんか!?』
「えっ? まぁないけど。」
『よかったぁ...』
「...!?」
怪我がないかと相手に確認。
無傷なことを安心して力が抜けた体を
相手に思いっきり委ねる。
倒れるスピードを早めてハグする形へ。
『怪我がなくって、本当に良かった...!』
アイドル時代に培った子犬系の声で
ダメ押しの耳元囁き。
これでどうだ...?
「あ、ありがとうございます///」
勝ったな。
ライブで幾度となく見てきた
沼に落ちた顔。
こっからは笑顔で名前を呼ぶだけで、
ズブズブと底なし沼にのめり込んでいく。
ポカンと口を開けている現場の方々。
佐「梨香子は無傷...?」
『うん!! 私は全然大丈夫〜』
何事もなかったかのように現場に戻る。
しょっぴーもきっと予想出来なかっただろうな。
ぶりっ子女を成敗どころか、落とすとは...
〈渡辺side〉
4本の雑誌取材を終え、ラスト1本。
最後の取材が1番めんどくせえな...。
梨香子も手焼いてたし、忠告しておくか。
お茶を飲んでいるAの耳元でボソリと
忠告をする。
こちらを見て首を傾げるA。
まあ、すぐにわかるよ。
取材が始まり、あの女はエンジン全開。
さっさとインタビューを済ませ、
俺と蓮が写真撮影をしてるときだった。
スタッフの大声が聞こえ、反射的にそちらを見る。
俺が見たのは、Aがあの女の手首を掴んで
倒れる瞬間だった。
どうやら照明がそちらへ倒れたらしい。
距離が離れていたのでAが何を言ったのか
聞きとることは出来なかった。
でも、その後の女の顔はまるで
恋に落ちたみたいにときめいた顔をしていた。
アイツ、なに言った...?
一瞬で強火蓮担をあんな顔にするとか、
どういう魔法使ったんだよ...
どんなに考えてもよくわかんなかった。
でも、直感的に感じたのは、
あいつは、もしかするとアイドルになるために
生まれてきたような存在なのかもしれない。
っていうことだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1235人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚葉(プロフ) - コメントありがとうございます。褒めて頂きとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2023年3月24日 21時) (
レス) id: bea541effa (このIDを非表示/違反報告)
りんごチョコポップコーン(プロフ) - 初コメ失礼します！兄の代わりで…という作品はよく見ますが、妹の代わりというのは新鮮で、思わず開いてしまいました！お話もさくさく読めて、その様子がしっかり想像できました！更新、頑張ってください！ (2023年3月24日 19時) (レス) @page7 id: 61d7d12311 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚葉 | 作成日時：2023年3月22日 8時
