ブラック本丸潰しの朝日さん (ページ29)

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歩み始めるページ29

一期side
朝日が本丸に帰ってくるなり部屋に籠ってしまった。
夕飯の時間になっても出てこないので心配で声をかけに行った。
返事がなかったので部屋に入る。
朝日は寝ていた。
近くに写真が何枚も散らばっていた。
手に取って見てみると、幼い少女と陸奥守、小夜、朝日が写っていた。
他には、山姥切国広が布に丸まっているところ。
狐の逸話を持つ刀たちが厨で油揚げのつまみ食いをしているであろうところ。
南海太郎朝尊が歌仙と肥前に叱られているところ。
黒田の皆が談笑しているところ。
手入れ部屋の前で蹲っている愛染と蛍丸。
他にも沢山ある。
グリップで纏めてある写真はきっと本丸就任記念に撮られたのだろう。
年々刀が増えていっている。
その写真は二十一枚あった。
朝日「ん・・・」
一期「すまない。起こしてしまったか」
朝日「別にいいよ」
一期「それと写真、勝手に見てしまった」
朝日「いち兄が写真見るの珍しい。普段見ないから」
一期「え、」
朝日「え？・・・あ」
朝日の目から涙が溢れる。
朝日「・・・私さ、本当は、ここに来たくなかったんだ。あの日、私も死にたかった。主の未来を奪ってしまった私に、生きる権利なんてないって思ってた。でも、皆は私を受け入れてくれて、また人の温かさを知って、生きたいって思ったんだよ。ズルいよね、酷いよね。私のせいで本丸が襲われたって言っても過言じゃないのに・・・」
一期「朝日・・・」
朝日「ごめんなさい、主・・・」
一期「大丈夫。きっとお前の主は生きてほしいと思ってる。気休めにしかならないだろうが」
朝日「主がどう思ってるかなんて、もうわからないよ！」
一期「少なくとも、私はそう思う。少し手紙の内容を見てしまったよ。朝日の主はとても優しくて温かい方なのだね。朝日が主に生きていてほしいと思っていたのと同じように、きっと朝日の主だって、朝日に生きていてほしいと思っているはずだ」
朝日「・・・やっぱり、いち兄は優しいね」
朝日は立ち上がり
朝日「夕飯、できたんでしょ？一緒に食べよう」
と言った。
今まで「一緒に食べよう」なんて言われたことがなかった。
少しずつ、歩み始めているのだ。
一期「そうだね」
だったら私はそれを見守るだけだ。