検索窓
今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:34,891 hit

追想 〜目覚め〜 ページ24

『A。そろそろ起きないと、悟が寂しがりすぎて死んでしまうよ』




悟が…寂しくて死ぬ…?

ふふっ…そんなわけないじゃない。




『嘘だと思うなら、早く目を開けて、目の前の男をちゃんと見るんだ』




何、言ってるの…?

私の目の前には傑しかいないよ?




『私は…Aが目覚めたら消えてしまう存在さ。気にしなくていい』




やだ。

傑が消えちゃうなら、私…もう、目を開けない。




『ダメだよ。君は生きるんだ。…しっかり目を開けて、ちゃんと世界を見て、生きていって欲しい』




傑が居ないのに?

私一人じゃ生きていけないよ…




『悟がいるだろ。…悟なら…Aを幸せにしてくれる』




悟…

何も言わずに居なくなった私のこと怒ってるよ。




『そんなことはないさ。抱きしめてくれただろ?』




きっと許してくれない。

悟はああ見えて本当は、真面目で純粋だから…




『そうだね。私達とは違って…正しくまっさらで眩しい存在だ』




でしょ? だから…




『だからこそ、悟と一緒に居れば、君は大丈夫』




そんな…傑が居ない世界なんて…

ねぇ、傑…もう逢えないの?

もう一度、逢いたい…ッ




『ごめん…でも…──…──…』




え? なに?

聴こえないよ?




『…あぁ…すまない。もう時間だ。じゃあね、A』




待って!

おいて行かないで…っ!!




『こら、ついてきちゃダメだよ。Aは、あっち』




やだ!

私も傑と一緒に行く!




『ほら、光が見えるだろう?』




いや! 光なんて見たくない!

一緒に連れて行って!!




『A……またね。』




待って! お願い…ッ!

行かないで!!

一緒にいて──…








.








.








.








「……す……る……」


「…A?」



私を呼ぶ声…


ずっと長い間、この声を聴いていた気がする。


この声は…



「…さ…ト…る…」

「うん。僕だよ、A」

「…ずっと…?」

「うん…ずっと、待ってた…ッ」



かすれた声しか出ない干からびた私とは対照的に、目の前には懐かしい潤いに満ちた煌めきがあった。

サングラス越しじゃない悟の、歳を重ねても未だに澄んだ瞳は朝陽に照らされて、いつか傑と眺めた綺麗に輝く海みたい。

疚しい思いなんて何もない、清々しいまでの清廉な美しさ。


『曇らせてはいけない』


そう、思わせられる。

多分、傑もそう言いたかったんだ。

自らが悟を曇らせてしまったから…



「水、飲める? 支えてるから、ひとくち頑張って」



肩を抱かれて起こされ、水が注がれたコップを私の口元に差し出す悟に甘えて、コクリと久しぶりの潤いを喉に流し込んだ。


*

74 一緒に生きてみない?→←72 拒絶、救い、誓い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (34 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
設定タグ:夏油傑 , 五条悟 , 呪術廻戦   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年12月24日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。