68 誓い ページ19
「傑…?」
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──パリンッ……
薄氷が割れるような乾いた高音が短く響いた。
俺の領域が解ける音だ。
『悟…Aを…頼むよ…』
最後の言葉を残し、領域を解いたら、傑は…
穏やかな微笑みを浮かべて壁にもたれかかり、眠るように息絶えていた。
あっさりしすぎて、恐ろしく実感が無い。
けど…
俺が大切な親友を殺したのは紛れもない事実で、目の前の傑からは、既に生気が感じられなかった。
ゆっくりと手を伸ばし、傑の頬に触れる。
まだ、温もりは消えていない…
なんでオマエ…
俺に殺されて、
安堵したみてぇに…穏やかな顔してんだよ…ッ
殺されて、長年の望みも叶わず…
おそらくこの7年、
何よりも大切にしていただろう
Aのことも残して…
「……ごめん……傑……」
「……ごめん……ッ」
助けてやれなくて、ごめん…
救ってやれなくて、ごめん…
解ってやれなくて、ごめん…
膝をつき傑の頭を抱きかかえ、零れ落ちるのは悔恨と謝罪で膨らんだ想いの雫。
ほんと、情けねぇ…
でも、今だけ…
今だけだから、許して欲しい。
弱音吐けるの、
オマエの前だけなんだよ、俺。
だからさ…
お前の亡骸を託したら、また笑うから…
お前の分も
笑って生きるって誓うから…
.
.
いつの間にか、薄紫の空は色を変え…
茜色に染まる空の下
流れる泪も悔恨も…
思い出のすべてを傑に渡して
俺は、前を向いて歩き出した――…
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年12月24日 9時