65 諦観 ページ16
どうしてこうなった…？
どこからならやり直せた…？
そんなもん、10年前から何度も何度も、飽きるほど自分に問いかけた。
けど何をどう辿っても、思考と記憶はやっぱりあの頃に戻る。
11年前、高専２年の任務失敗。
そして、10年前…高専３年。
傑が闇に落ちていくのを止められなかったあの頃に…
自分が強くなることばかり考えていないで、もっと傑の傍に居て話を聞けば良かった。
傑自身をちゃんと見て…傑の想いを、憂いや憤り、すべての感情を受け入れられていたら…そうすれば…
「…もしかしたら…なんて…今更だ…」
＊
懐かしい入り組んだ裏
現代の高専においては、避難通路とされている細い道だ。
傑と二人、幾度となくこの道を通って、夜中に高専の寮を抜け出した事が、今も鮮明に思い出せる。
結局、夜蛾先生にバレて翌朝、二人揃ってげんこつを食らう羽目になるんだけど。
「バカばっかやってたよな……なぁ、傑…」
楽しかった
二人でふざけてはAと硝子に呆れられ、夜蛾先生には漏れなくげんこつを食らい、それでも楽しくて笑い合っていたあの頃。
戻りたい。
戻れない。
戻らない。
戻せない…
時空間を支配できる能力を持っていても、時間を過去に戻すことは不可能。
流れる時も想いも、色づき形を変える事を止められない。
胸を締め付ける憂愁を分かち合えていた密かな想い人も、今はその面影すら…
数十メートル先。
あの角を曲がってくる。
呪力もほぼ使い果たして弱りきっているけれど、俺には見えんだよ、お前の
あの頃は自分の事に精一杯で、それをちゃんと見れていなかった。
濁っていく色にも、歪んでいく形にも気づかなかった。
だから今は、目を逸らさずにちゃんと見るよ。
お前のすべてを…
夕焼けの空が、薄紫色に輝いていて酷く幻想的だ。
過去の清算をして新たな未来を始めるには、お
「…遅かったじゃないか……悟…」
憂太の呪力出力に負け、右腕を失った姿の傑が諦観の笑みを浮かべて脱力し、壁にもたれ地面に座り込んだ。
本題から逸れた会話を繰り返しても、俺の決意は変わらない。
それは、傑も承知の上だ。
「…傑…」
「何か…言い残すことはあるか…？」
発した言葉はやけにゆっくりと紡がれ、なだらかに傑に吸い込まれていく。
まるでスローモーション。
時空間が歪んだみたいに、俺達の周りだけ時間の流れが遅くなる。
信用も信頼も、お前から失くしたことは一度もない。
今でも俺は…
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年12月24日 9時
