9 可愛い…♡ ページ9
俺が遅い夕食を食べ終わった後。
二人でリビングのソファーに並んで座ると、観念したAがポツリポツリと話し始めた──
「──ってのが理由で…悟さまとするのが嫌とか、そういうんじゃなくて……本当に私…そんな、リードするとか無理で…ッ」
帰宅した時点で既に超絶緊張してギクシャク動いていたAが、一生懸命しどろもどろ、時折早口で、これまで俺を拒絶していた理由を話してくれた。
正直、話の内容より、正室修行で習ったアレコレについて、照れまくって恥ずかしがりながら話すAが可愛くて、今にも押し倒しそうだった。
いやー…処女ってマジかぁ……嬉しすぎる…!
とりあえず今は、この喜びを噛みしめたい。
何度か小さく息を吸って吐いて、ドクドク脈打つ心臓を宥めながら、口を開いた。
「…マジで…したことねぇの?」
「…うん…だって…中学の頃のやんちゃな悟さまのお世話で恋愛なんてしてる時間なかったから…彼氏作ってる余裕もなかったんだもん…」
中学の時の俺、グッジョブ!!
我儘、横暴、クソガキ万歳!!
かまって欲しくて意図的にAを振り回していたかいがあった。
すっかり誰かに奪われたと思っていたAの純潔が、未だ誰にも奪われていなかった快挙に、心の中で拍手喝采が起こる。
当のAは、少し俯いて視線を彷徨わせ、頬を染めて涙目で…
「A」
羞恥で今にも泣き出しそうになりながら、それでも名前を呼べば、俺から目を離さずに視線を合わせてくれる。
こんなん可愛すぎて、夜も更けたこの時間に我慢とか、かなり無理なんだけど…
「抱きしめてキスしてもいい…?」
「…うん…」
やばっ…『うん』って…
初めて『はい』とか『どうぞ』とか、主従関係ではない返事が返ってきて、それだけですげぇ煽られてる気分になる。
けど、この感じだとコイツ、全然気づいてないんだろうな。
「…ふはっ!」
「え!? 何で笑うの!?」
急に可笑しくなって堪えられずに吹き出したら、いつもなら頬を膨らましているようなこの場面で、Aは感情大渋滞で焦りだした。
はああぁぁ…可愛い…♡
「オマエ、気づいてる? さっきから敬語外れてんの」
「あ、あれ? …何かもう、いっぱいいっぱいで…ごめん…」
「いーよ。うん、やっぱその方がいい」
──チュッ…
「〜〜〜ッ」
あぁ〜あ…いつもしてんのに、一瞬のキスだけでそんなに真っ赤になって…
この後もっと凄いことすんのに大丈夫かよ。
「どうする? 止める?」
「…ゃ……止めないで…」
先を懇願して俺を求める魅惑的な切ない表情に、ぶっ飛びそうな理性の手綱をきつく握り直した。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年12月24日 18時