7 不満 ページ7
「待ってください！ 悟さま！？」
「……。」
暫く大きな歩幅で歩く悟さまを小走りで追いかけていたら、不意に悟さまが立ち止まった。
おかげでやっと追いついたけれど、さすがにちょっと息がッ
「敬語。あと、“さま”」
「…敬語…と、“さま”…ですか…」
胸に手を当てて呼吸を整えながら反復すると、振り返った悟さまの表情には、はっきり『不満』と書いてあった。
ちょっと拗ねている気もする。
「傑のことは“さま”付けて呼ばねぇじゃん」
「それは…傑くんは御三家ではないですし…」
「俺、誰よりもお前に近い存在なのにおかしくね？」
「それはそうですが…悟さまは五条家のご当主になるので、一般人に近い窓の私から見れば雲の上の存在で…言ってしまえば“神様”です」
「神……A、お前にはマジで俺がそう見えてんの？」
ちゃんと俺を見ろと、キラキラ輝く空色の双眸が私を射抜く。
400年振りに生まれた呪術界の宝
六眼と無下限呪術の抱き合わせ
現代最強
御三家
五条家の当主
雲の上の存在
…神様…
確かにそれはそう。
でもその前に、悟さまは一人の人間。
私の大切なひと。
この世で唯一、大好きだと想えるひと。
「まず敬語からやめろ。これは次代当主としての命令だ。反論は受け付けねぇ」
「え、急に横暴！」
「そうでもしねぇと直さねぇだろお前」
「…た、確かに…」
痛いところを突かれて言い返せない。
そして次代と言えど、当主命令とあれば従うしかない。
「今から敬語無しな。もし使ったら〜ペナルティー何にしよっかなぁ〜♪」
「そんなっ今から！？ せめて明日からでお願いします！」
「おしっ！ んじゃ明日からな。ペナルティー考えとく♡」
うししっと幼い子供のように破顔して笑う悟さまに、胸がキュンとなる。
大人びた言動をすると思ったら、次の瞬間にはこうしてイタズラ好きの悪ガキ顔に変わるなんて…心臓に悪い。
不覚にも『可愛い、好き』と思ってしまった自分の心を自制する。
だって…そんなの見せられたら愛おしさが溢れて、抱きしめたいって衝動が背中をグイグイ押してくるんだもの。
……。
私、重症だ…悟さまが好きすぎる。
悟さまへの『好き』が溢れてきて堪らず、前を歩く大きな背中に抱きついたら、
「なっ…ぅおい！ おまっ…なにして…ッ！」
「…だって…悟さまが…」
意外にも悟さまが慌てふためいて身をよじった。
厚手のコートの上からでもわかる硬い筋肉…凄い…
胸板の逞しさは抱きしめられるたびに感じていたけれど、背中は初めて。
毎日、鍛練を怠らない悟さまの細身だった身体は、この２年で筋肉がつき、かなり大きくなった。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2023年12月24日 18時
