12 反則 ページ12
「あの…悟さま…ッ」
「っ悪い…痛かった?」
震える小さな声に、俺の動きは反射的に停止した。
眉根を寄せて辛そうなAに視線を落とすと、今度は困ったような表情を浮かべ目線を逸らす。
急ぎすぎたか…と反省していたら、
「そうではなく……あ、痛いことは痛いですが…」
Aが口ごもりながら呟くものだから、もっと慎重に…と心を落ち着かせ深呼吸をして口を開いた。
「もう少しゆっくり──」
「──いえ! あの…今日は、さ…最後までしてください…!」
「!?」
──次の瞬間、俺の理性は跡形もなく消し飛んだ。
*
「大切にするって決めてたのに…台無しだ…」
「昨日の今日で“おめでとう”なのか“ご愁傷さま”なのか、はっきりしてくれ悟」
「机に突っ伏して落ち込んでる五条、ウケる。写真と動画撮って歌姫先輩に見せよ〜」
傑にも硝子にも反論する気にならねぇ。
昨夜のAは反則だった。
あんな羞恥心いっぱいの涙目の訴え、可愛すぎんだろ。
Aの心と身体の準備が整ってから、ゆっくり慣らして行こうと決めていたのに、扇情的で魅惑的な表情で見上げられて先を乞われたら、ゾクリと震えた俺の身体は止められなかった。
衝動のままにねじ込んだ先がグチュ…と卑猥な音を立てて奥へ奥へと誘われ、根元まで飲み込まれていく光景に、他の女とするのとは比べようもないほどに高揚した。
Aは俺のものだと、俺のカタチを刻み込むように、身体に憶え込ませるように、次第に激しく律動し…
「Aに負担かけた…最悪だ…」
「五条がそんな気を遣えるとは…意外すぎ」
「Aさん限定だけどね」
「……。」
朝からずっと、よく分からない自己嫌悪に苛まれていた。
今夜、家に帰ってAに会ったら、昨夜の行為を思い出して自然と身体が反応し、心臓が弾け飛びそうなくらいに込み上げる、ドロリとした疚しい衝動を抑え切れないかもしれない。
ずっと恋い焦がれていた愛しい存在のAを、気が済むまでベッドの上で可愛がっていたくなる。
他人に対してこんな気持ちになったのは初めてで、戸惑いの方が大きい。
「でも良かったじゃないか。既成事実もできたことだし、これでAさんは正式に悟の恋人だろう」
「それは、そう…だけどさ…」
息づかいも荒かっただろうし、Aを求める行為も激しくなって、がっついた感は否めない。
思い返したら『最低でかっこ悪い』というのが自己評価。
たった一夜の行為で、Aが引いてないか…? と、怖くて仕方ねぇ。
次を拒否られたら、俺…二度と立ち直れない気がする。
家に帰るだけなのに緊張するとか…情けねぇ…
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年12月24日 18時