10 呪いの発生源〈憂太side〉 ページ10
「乙骨憂太です。よろしく、お願いします…」
はぁ…
何度経験しても慣れないなぁ、この歓迎されていない空気。
高専で自己紹介した時を思い出す。
あの時は里香ちゃんを制御できなくて大変だった。
みんなに怪我させちゃったし。
ふと顔を上げて教室を見回すと、公園で見かけたあの子が一番後ろの席に座っているのが見えた。
やっぱり蠅頭が数体、纏わりついている。
僕が近づいただけで消し飛ぶと思うけど…
どうしてあんなに呪われてるんだろう…？
他人に呪われるような悪い子には見えないんだけど…
運良くその子の隣の席になり、席に近づいただけで蠅頭は僕の呪力に耐えきれず燃えるように消えた。
(もしかして、この子が呪いを集めてる…？)
そんな予想を立ててみる。
今更ながら、調査も任務に含まれていることを思い出した。
なるほど…
周りの人間を全員、一度は疑わなきゃならないのか…
そして、それを悟られてはいけない。
僕はあくまでも、ただの転校生に徹しなければならない。
普通は持ち歩くことのない得物を背負っていたとしても、『ただの高校生』を演じ切らなければならないんだ。
(五条先生はそういうの凄く得意そうだ…僕に出来るかな…)
だって早速、隣から熱い視線を注がれている。
仕方ない。探るためにも会話はしないとね。
「転校生って、そんなに珍しいかな？」
怪しまれないように、目線を合わせて頬を緩ませた。
「いや…まぁ…こんな学期の途中とか、やたら不自然なタイミングだし…」
「あぁそっか…そうだよね。確かに…それは考えてなかった…」
「は…？」
確かに、普通高校では不自然な時期だ。
新学期が始まってまだ１ヶ月も経ってない。
こんな時期に転校って…
「まずったなぁ…僕のせいじゃないけど…一応、先生に報告しておこう」
「え…？」
上からの指示書が悪いのか、五条先生が適当なのか…
どちらにしろ、そんな悠長に構えていられない案件だったって事だ。
呪いが強くなる前に叩き、その要因を取り除く。
放課後にでも早速、呪いの濃い場所に行かなきゃ。
「Aさん、この学校のこと、色々教えてね」
「うん…」
AAさん。
肩までのストレートの黒髪に、キラキラと潤った大きな瞳。
目鼻立ちは童顔で、一般的に可愛らしい外見の女の子。
(真希さんと違って清楚な…って怒られるな笑)
僕の初見としてはおそらく、呪いの発生源。
ずっと一緒に行動して目を離さないでいるのは不自然だし難しいから、彼女から意識を離さないようにする。
Aさんの呪力の性質を憶えるんだ。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
