7 長期任務〈憂太side〉 ページ7
「憂太〜、君にぴったりの長期任務の指示書だよ〜」
任務をひとつ片付けて戻った高専の教室。
報告書を書き始めた僕を目敏く見つけた五条先生が、軽い足取りで登場した。
「え、長期…ですか…？」
一体何に反応して特定の人物の気配を認知するんだろう…？
いつどこにいても、五条先生のレーダーにひっかかり見つかってしまう。
やっぱり呪力…なのかな…
人それぞれ違うと先生は言うけれど、僕はまだ判別できるレベルに達していない。
「経験、積みたいって言ってたでしょ？」
「はい、でも長期って…」
確かに、経験を積みたいから色んな任務をこなしたいとは言ったけど、長期とは望んでいなかった。
「調査と祓除。どっちも憂太、一人でやってもらう」
「え、調査も…ですか…」
「そ。調査から祓除まで！ これからこのパターンの任務を何度もこなしていけば経験値は爆上がり間違いなし！」
五条先生がそう言うなら、間違いはないんだろう。
おそらく、先生も学生の時からそういう任務をこなしていたんだ。
「まぁ、僕が行ってもいいんだけど、やっぱり同年代の憂太が適任だと思うんだ♪ レベルももう、申し分ないしね」
「はぁ…同年代…？」
「憂太の頑張り次第では短期にも出来るだろうし、何と言っても現場は高校！ 青春を謳歌できて一石二鳥さ！ 潜入手続きも住む場所も手配済みだから、安心して頑張っておいで」
「え、もう！？」
真希さんや狗巻くん、パンダくんに会う時間が減っちゃうな…
それに、
「任務に青春って必要ですか？」
「あったりまえでしょー！ 十代の君達には必要不可欠！ 特に憂太にはね」
ちょっとした疑問を投げかければ、目隠し越しでも分かる満面の笑みが返ってきた。
五条先生はいつも『青春』を強調する。
仲間との何気ない日常を大切にしなさい、と。
それが将来、自分にとって何よりも大きな糧になるのだと…
以前、少し切な気な声音で伝えられた言葉は、普段おちゃらけている五条先生においては、逆に酷く信憑性があった。
先生の過去に一体何があったのか…
好奇心が膨らみ、気になって数ヶ月前に調べてみた事がある。
そうしたら…
あまりにもやるせない事実が判明して、胸が軋んだ。
だから、僕は五条先生に負けないくらい強くなろうと決心したんだ。
「分かりました。行ってきます！」
「何かあったらすぐ連絡すること、いいね？」
「はい、先生」
「あははっ！ いーねぇ、先生って響き♪」
五条先生を『先生』と呼ぶのは、２年生では僕しかいないからか、先生は僕の返事に嬉しそうに声を弾ませた。
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
