46 鋭い凶器 ページ46
――きゃああぁぁ…
――ヒュ〜…
羨望とひやかしが混ざり合った、色めいた歓声が起こる。
他にも生徒が沢山いるのに！！
「ゆ、ゆゆゆゆ憂太！？ ここ学校！！ 廊下！！」
ゆっくりと離れた憂太に、なんとかこんとか訴えたけれど、当の憂太はキョトン顔でどこ吹く風。
好奇の視線をひしひしと感じる。
凄く見られてる…恥ずかしい…ッ
なのに…
「僕が好きなのは、Aちゃんだけだよ」
「ゆ…うた…」
「Aちゃんしか見えてない」
「〜〜〜ッ」
至近距離での優しい微笑みに、クラリとめまいがした。
甘い…ッ…甘すぎるっ！！
付き合う前と付き合ってる今、Before＆Afterに差がありすぎて腰が抜けそう…っ！
「すっ…少しは周りも気にしてよ…」
みんなからの視線に耐え兼ねて、もはや弱々しい反撃しか出来ない私に憂太は、
「周り…？ あぁ…そうだね。でも…」
『もう我慢しなくていいと思ったら、つい…ね？』
腰を抱いたまま、私にだけ聴こえる潜めた声が耳元でささやいた。
勝手に体温が上がっていくのを感じ…
これじゃあ、私がもの凄く憂太を求めてるみたい。
何で憂太はこんなに余裕ぶっかましてるの！？
女の子とちゃんと付き合うの初めてって言ってなかった！？
「え、だって、遠慮なくAちゃんと一緒に居られるのが嬉しすぎて、それ以外はどうでもいいってゆうか…」
純粋で真っ直ぐな想いって、鋭い凶器みたい。
何気ない視線も、私の名前を呼ぶ凪いだ声も、簡単に私を囲ってしまう逞しい腕も、優しく触れる柔らかな唇も…
全部、私の心を貫いて離してくれない。
こんなんじゃ私の心臓が持たない…
ってゆうか。
もし今後、二人っきりの時に甘ったるい雰囲気になって…
もしそういう行為に進んじゃったりなんかしたら…
「…っ！？」
ど、どどどどうしよう…ッ！！
「憂太のホワイトとブラックのギャップがキツい…」
「…ごめん…嫌なら直すから…」
耳と尻尾を垂れて、しょんぼりと肩を落とす憂太。
これだって計算でやってる訳じゃないからタチが悪い。
その姿にキュンキュンする私、だいぶヤバいのでは…？
「…直さなくていい…けど…周りの目は、少し気にして欲しい…かな…」
「うん！ わかった！」
尻尾フリフリ、おめめキラキラ。
ほんとに分かってる…？
でも…ま、いっか笑
憂太が笑ってくれるなら。
暗闇を照らす眩しい光みたいに、私の心をいつだって明るくしてくれる。
「好きだなぁ…そういうところ」
「ん？」
剣だこでゴツゴツした、厚く頼りがいのある憂太の手をそっと握った。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
