44 募る想い ページ44
「憂太…」
「家まで送るよ。行こう」
私の小さな呼びかけにハッとした憂太は、照れ笑いで話を切り上げた。
ええ!? ちょっと待って!!
ブランコの前から踵を返して公園の出口に向かい、スタスタと歩き出した憂太を追いかける。
さっき涙を堪えたせいで喉が固くなり、もたついてなかなか出てこない言葉の代わりに何とか憂太を引き止めようと、もはやダイブに近い勢いで憂太の背中に抱きついた。
「ぅわっ! Aちゃん!?」
首だけで振り返ってうろたえる、憂太の背中に顔を埋めた。
さすが憂太。
私の渾身の体当たりを受けても、少しも体勢を崩さず倒れたり転びそうになることもなく、体幹がしっかりしていることが分かる。
制服の上からでも感じる引き締まった身体に、今から伝えようとしている言葉が重なり、ドキドキと心臓がうるさい。
「Aちゃん、この体勢はちょっと…ッ…まずいって言うか…何て言うか…」
私を背中で受け止めたまま振り払わずに焦っている憂太を、更にギュッと抱きしめた。
私だって、憂太に伝えたい想いがあるのに…ッ
「自分だけ言いたいこと言って、さっさと行かないでよ!」
「えっ!? …ご、ごめん…」
「私だって…ッ」
私も…憂太のこと……
そこまで出かかっているのに、どうしてか寸前で口が動かなくなる。
「Aちゃん?」
「……っ」
「…えーっと……あー……うぅ…っごめん!!」
唸り声が聴こえたと思ったら、私の腕の中で器用にクルリと反転した憂太に、振り向いた勢いのままきつく抱きしめられた。
「Aちゃん、男は一度スイッチ入ると止まれなくなるって知ってる?」
「……うん……知ってる……」
「僕は例外じゃないよ」
「分かってる…でも…」
隼斗へ向かっていた想いを手放したら、急激に寂しさに襲われた。
今は温もりが欲しい。
けれど誰でもいいって訳じゃない。
憂太がいい。
抱きしめてくれる力強い腕も、少し高い体温も、何故か安心する憂太の匂いも…
ブレスレットを貰った今、言わなきゃ…ッ
私を抱きしめる憂太の腕の力が緩んだ僅かの隙に、背中に回していた腕を引き抜いて、憂太の首にぶら下がるように腕を巻き付けた。
そして躊躇うことなく、憂太の唇に自分の唇を重ねた。
「A…ちゃん?」
「憂太が好き」
「え…っと、それって…」
「…恋人に…なりたいって…こと…」
「ほ、んと?」
「うん…ほんと…」
自分から告白するなんて初めてで、言いながら恥ずかしさで顔が熱くなり俯いた。
けれど燻っていた想いを伝えたら、息苦しい胸が爽快感で満たされた。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時