41 告白〈憂太side〉 ページ41
Aちゃんと一緒に居るだけで楽しくて、ゲームに夢中になって時間を忘れて、外に出た時には空が夕焼けに染まり始めていた。
「そろそろ戻ろう」
「…うん…」
「送るよ」
「…うん…」
離れがたくて何とか発した言葉に、Aちゃんもどこか寂しげに頷く。
可愛いな…
そう想うと、どうしてもAちゃんに触れたい衝動が込み上げる。
『両想いじゃなきゃ犯罪だな』
真希さんの言葉がリフレインして、グッと拳を握って衝動を抑え込んだ。
内なる戦いを何度も繰り返し、気づけばAちゃんの家の近くの公園に辿り着いていた。
Aちゃんはブランコに座るハヤトの黒い影に近づき、
「ごめんね、隼斗。…私も…本当に好きだったよ…」
涙を浮かべながら、詰まる声音で呟いた。
あぁ…Aちゃんの心にはハヤトがいるんだ。
過去形の告白だったけれど、きっとまだ忘れられないでいるから、この呪いも再発現する。
それなら…と、ひとつの決意を胸に大好きな女の子の名前を口にした。
「Aちゃん」
ゆっくりと振り向いたAちゃんの笑顔は、闇の世界で生きる僕の心に射し込む眩しい光。
やっぱり、可愛い…
改めて惚れ直してしまうくらい、Aちゃんが輝いて見えて自然と頬が緩む。
「憂太…」
「Aちゃん、手、貸してくれる?」
今すぐ抱きしめてしまいたいほど愛らしい震える声で名前を呼ばれて、目的を果たそうと僕も言葉を返す。
不思議そうに差し出された華奢な手を取り、
――シャラ…
「…え、これ…」
包みから取り出したブレスレットを贈った。
昔、妹にせがまれて、何度もこっそり着けてあげてた母親のブレスレットと同じタイプで、難なくAちゃんの手首を飾る事に成功する。
驚いたAちゃんは大きな瞳を更に大きくして、ブレスレットを目の高さまで持ち上げた。
「雑貨屋さんの…?」
「うん、Aちゃんに似合うと思って」
「…いつのまに…」
「僕、Aちゃんが好きだよ」
夕陽に照らされて煌めくブレスレットに背中を押され、思いのほか、すんなりと焦がれる想いが零れた。
人生初の告白に、Aちゃんは困惑の表情で…
「憂太…私…」
「うん、分かってる。ハヤトを忘れられないんだよね…」
「そう、じゃなくて…」
たとえこの先ずっと、Aちゃんの心が僕に向かなくても、この決意が揺らぐことはない。
「恋人にはなれなくても…Aちゃんを僕に護らせて欲しい。これはその決意の証」
それでも、想いを受け止めてもらえない切なさが心臓を捻り、浮かべた笑顔は歪んでいた。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時