37 恰好の餌食〈憂太side〉 ページ37
「とは言え、呪力が練れるイコール呪いを祓えるって訳じゃないよ」
「え、そうなんですか!?」
五条先生の説明に、Aちゃんが驚きの声を上げる。
僕も同じ反応をしたなぁ…と懐かしい思い出を心に浮かべた。
そう、呪いを祓うには…
生まれつき身体に刻まれている生得術式に呪力を流すか、素晴らしく洗練された体術に呪力を乗せること。
生得術式は持っていない人間の方が多いし、体術にしても能力とセンスがないと呪いにヒットさせることは難しいから、祓うことは出来ない。
「だから、祓うことは出来ないけれど呪いを見ることはできる。そういう人材が各地に“窓”として点在して高専や術師に協力してくれているんだ」
それは僕も初耳だった。
“窓”は『高専関係者』としか聞かされていなかったから。
「じゃあ私、その“窓”にはなれますか?」
「うーん…そうだねぇ…もっとはっきりくっきり呪いを見ることが出来たら…可能性はあるかな」
「頑張ります!」
「いいね♪ やる気のある子は好きだよ」
「先生!?」
「やだな憂太…疚しい意味じゃないよ〜」
あははっと軽く笑う五条先生の僕をいじる悪ふざけだって分かってはいても、『好き』という単語につい反応してしまう。
これじゃあ小学生みたいじゃないか…
だから先生にからかわれるんだ。
ニヤニヤと横目(多分)で僕を冷やかす先生を警戒していたら…
「…ひっ…いや!」
「なっ…んで!?」
――バシュッ…!!
頭を抱えたAちゃんの小さな悲鳴が聴こえて、反射的に刀を抜いていた。
「さっすが憂太! 準1級クラスならもう楽勝だね〜」
ヒュ〜という口笛で無駄に褒め称える五条先生はさておき、僕と先生を無視して、どうして上級呪霊がAちゃんを…?
「もしかして…」
「例の彼とのバグのせいだね。早くA自身が呪いをはね除ける力をつけないと、呪力量が増えた彼女は呪霊にとって恰好の餌食だ」
「……はぁ…分かっていたんですね、先生」
「えぇ〜? 何のことぉ?」
どんなに軽薄でふざけた態度でも、実はその裏に本音や本来の目的を隠しているのが、僕から見た『五条悟』だ。
ここでAちゃんが覚醒して、僕達のせいで集まった呪霊に狙われる。
それを僕が助けて原因と対策に気づくところまで、先生は計算済みのはずだ。
「あの…憂太…」
「Aちゃん、大丈夫!? 突然だったから手荒になっちゃってゴメン」
「ううん、大丈夫。だから…もう下ろして?」
「あ、」
呪霊を祓うのに、Aちゃんの腰を抱き上げたままだったことに漸く気がついた。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時