36 稀有な素質〈憂太side〉 ページ36
「なぁんで憂太までいるの?」
「いいじゃないですか別に」
Aちゃんへの特別授業を五条先生が引き受けたと聞いて、二人きりにするなんて心配だったから数回目の授業から僕も同席することにした。
「憂太は他にも任務あるでしょー?」
「それは五条先生もでしょ?スケジュール調整したんで、授業が終わったら行きますよ」
「二人とも忙しいのに、ごめんなさい…」
「大丈夫大丈夫〜♪ 僕達が忙しいのは、Aのせいじゃないから気にしないで」
五条先生は軽い調子で、恐縮するAちゃんの頭をポンポンとあやした。
高専の生徒じゃないのに、ちゃっかり『A』って呼び捨てだし。
僕が高専に来たばかりの頃に教わった呪術の基礎知識を、Aちゃんの後ろで静かに聞いていた。
Aちゃんは真剣な表情で先生の言葉に耳を傾けていて、僕の存在なんて忘れているみたいだ。
「んじゃ、何事もすぐ実戦! ちょーっと出かけるよ」
「ええ!? Aちゃんは非術師ですよ! まだ早すぎるんじゃ…」
「…って、彼氏君は言ってるけど、Aはどうする?」
「行きます! 彼氏じゃないけど」
「そこ否定しなくても良くない?」
そんなこんなで、三人で街へと繰り出した。
五条先生と僕が一緒に居るからか、呪霊が徐々に集まってくる。
「さて、A。今僕達の周りにメチャクチャ呪霊がいるんだけど、目を凝らして見てごらん?」
「…え、目を凝らす…?」
「そ。お腹に力を入れて、君の中に流れる呪力に集中して」
今まで呪いに接してこなかったAちゃんには、かなり無茶じゃないかな…?
そう感じて止めようと一歩踏み出したら…
「…あ。何となくぼんやりと黒いモヤモヤしたものが、あちこちに見えます」
「えっ!? Aちゃん本当!?」
「うん、上出来。僕の指導がいいのかなぁ♪」
考えてみたら、Aちゃんの側にはいつも“呪い”の気配があった。
本人に自覚はなくても、無意識に死者を留めて呪いを発生させていたし、素質は持っていたのかも。
ってゆうか…
「先生、Aちゃんの呪力量、急激に増えてませんか?」
「思った通りだよ、憂太。A本人が意識して呪力を解放したら、自然と体内で呪力を練り始めたね」
「そんな事あるんですか?」
「稀にね、そういう素質を持った人間がいるんだ。それを知らずに死ぬのが普通だし、高専側でも気づかない」
静かに微笑む五条先生は、
「Aは憂太に出逢ったのがトリガーになった。運が良かったね」
そう話を締め括る。
視線の先では、華やかな笑顔が僕を見つめていた。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時